KDDIのJCOM株取得はTOB必要?

KDDIが予定しているジュピターテレコム(JCOM)への資本参加を巡り、一部の株式市場関係者の間でTOBが必要ではないかとの声が上がっている。議決権の3分の1以上を得るにあたってJCOMの実質的な大株主である米リバティー・グローバルから相対で取得すると発表したためだ。
(日本経済新聞2010年1月28日16面)

【CFOならこう読む】

「焦点は金融商品取引法で定める株式のTOBに関する規定。60日間で10人以内から議決権ベースで3分の1以上の株式を取得する場合にはTOBが必要と定めている。外見上この規定に当てはまるようにみえるからだ。
KDDIが取得するのはJCOM株を保有するリバティグループ傘下の3つの中間持株会社。直接、JCOM株の3分の1以上を取得しないため、TOBルールには抵触しないとの解釈だ」(前掲紙)

スキームの概要は次の通りです。

現状 (議決権比率ベース)

SM合弁解消後 (議決権比率ベース)

KDDIの資本参加後 (議決権比率ベース)

KDDIは、SMの上位会社であるLiberty Japan, Inc. 及びLiberty Jupiter, Inc. 並びにJ:COM株の3.7%を直接保有するLiberty Global Japan II, LLCの3社の持分100%を取得し、LGIグループのJ:COMに対する出資関係 (37.8%を出資) を承継します。

(注)SMは、LGIグループと住友商事株式会社 (以下「住友商事」) の合弁であり、J:COMの株式の58.1%を保有していますが、GIと住友商事で締結している出資者間契約上、SMを通じた合弁関係は、2010年 2月18日をもって終了し、LGIと住友商事は合弁関係を解消することになっています。

そもそもTOBは趣旨というのは次のようなところにあります。

「発行者の支配権または経営権に重大な影響を与え、また発行者の株式その他の有価証券の価格形成に重大な影響を与える株券の買い付け等について、取引当事者間の自由な合意に基づく取引を無制限に許容すると、(1) 株主・投資者間の情報の偏在、(2) 発行者の支配権または経営権を取得することにより生じる上乗せ価値(いわゆる支配権プレミアム)の分配の不公正、さらに(3) 株主・投資者間に対して付与される売却機会の不平等により、公正な価格形成、円滑な流通、および株主・投資者間の平等が確保されないという問題が生じうる」(「ANALYSIS 公開買付け」アンダーソン・毛利・友常法律事務所編 商事法務)

だとすると、このディールはTOBがかからないとおかしいと感じます。
現行法上TOBを必要とする要件を充足しないということなら、現行法自体に問題があると思います。

【リンク】

2010年1月25日「株式会社ジュピターテレコムへの資本参加について」KDDI株式会社