株主優待もらっても損の逆説

株主優待は、権利を行使できない株主にものすごく不利な制度だ。だから欧米市場はもちろん、外国人株主比率の高い新興国でも株主優待はあり得ない。
(「橘玲の不思議の国」探検 日経ヴェリタス2010年2月14日70面)

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日本航空の法的整理が決まり、株主優待のチケット割引券を目的に日本航空株式を購入した一般投資家が損失を被ったことになります。

しかし、日本航空に乗る機会のない外国人株主や、年金基金や生命保険を通じて株式を買っている個人投資家はこの恩恵を受けることができないことを株主平等原則の観点から橘氏は問題にしています。

「みんなを平等に扱うには、利益はモノではなく金銭で還元するしかないのだ」(前掲紙)

株主平等原則の観点からも問題ですが、現物配当との区別が明確に出来ない点も問題だと思います。日本の上場企業の中には配当原資がない会社が、株主優待を行なっている例もあるのです。

この点、新会社法実務相談(西村ときわ法律事務所編 商事法務)は次のように説明しています。「現行の一般的な株主優待制度は、現物配当制度とは別個のものとして認められるという理解が有力であり、また株主優待制度は、多くの場合、個人株主作りや自社商品・サービス等の宣伝を目的として小額のものを分配するに過ぎず、株主に対する配当の性格は認められないのではないかと思われます。もっともかかる合理的な目的に相当な範囲を超えて、株主優待制度の下に多額の会社財産を払い戻す行為は実質的な現物配当として、会社法453条以下の配当規制に服することなくこれを行うことは許されないものと思われます。」

株主優待も含めて利回りの有利・不利を紹介している投資情報雑誌が少なからずあり、小額のものを分配するに過ぎない、とは言えない場合が多いように思います。

ここはやはり株主優待も現物配当として捉え、株主に金銭分配請求権を付与するという整理の仕方をすべきではないかと僕は思います。

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