白川日銀総裁、国債下落のリスク警戒 日本の財政は"深刻な状況にある"

日銀の白川方明総裁は18日、金融政策決定会合後の記者会見で「財政の持続可能性に関する市場の関心が世界的に高まっている」と述べた。財政の悪化が国債価格の下落につながるリスクを警戒する構えをみせた。金融政策については「財政ファイナンス(国の資金調達)を目的としない」のが重要だと語り、長期国債の大幅な買い増しに慎重な姿勢をにじませた。望ましい物価上昇率を明示する「インフレ目標」の設定には難色を示した。
(日本経済新聞2010年2月19日5面)

【CFOならこう読む】

日銀総裁のことばは、一般の人にわかるようなものでなくてはならないと思うのですが、そういう姿勢は感じられませんね。またマスコミは正しくわかりやすく伝える義務があると思いますが、その責務を果たしているとは思えません。

「国債価格の急落を防ぐには、各国が「財政再建の道筋を示し、市場の信認を確保する」のが欠かせないと強調した。「金融政策運営が財政ファイナンスを目的としない。そうした姿勢を政府が尊重し、市場が信認する」ことが必要だとも語り、間接的な表現で国債の大幅な買い増しに慎重な姿勢をにじませた」(前掲紙)

国債の大幅な買い増しが何故まずいのか?

それは大きなインフレにつながる可能性があるからです。

文芸春秋3月号に、野口悠紀雄氏の「ついに国債破綻が始まった」という論稿が掲載されています。その中で野口氏は、1930年代に高橋是清蔵相が日銀引受けによる国債発行を行なったことにより、4年間で物価が60倍上昇したことを紹介した上で、このようなことが起きないように、財政法5条が日銀引受け国債発行を禁止しているが、これが形骸化するリスクを次のように指摘しています。

日銀は、銀行が保有する国債を買い上げることができる。これは市中に資金を供給する方式の一つであり、そのこと自体が問題であるわけではない。しかし、もし政治からのプレッシャーを受けて日銀が国債買い取りを増せば、実質的に直接引受けと似た効果が生じる(現在日銀の国債保有残高は68兆円である)

“金融政策運営が財政ファイナンスを目的としない”とは、このようなリスクを回避する姿勢を日銀として言明しているわけです(要するに当然のことを言っているだけです)。

白川総裁はさらに次のように話しています。

「インフレ目標を巡っては「採用しているかどうかは、意味のある論点ではなくなってきているという印象がある」と指摘。「物価動向だけに過度の関心が集まる結果、物価以外の金融・経済の不均衡が見過ごし、金融危機発生の一因になったのではないかという問題意識が高まってきている」との認識を示した」(前掲紙)

これは要するに金融緩和が世界的なカネ余りを生み、それでバブルが生まれたと言っているのですね。

日銀というのは、下手すりゃインフレを起こし、国民が身ぐるみはがされる可能性もあるような仕事をしているのだから、そこの総裁たるもの、何をどう考え、どういう施策を打とうとしているのか、一般の人にわかるように説明してもらいたいものだと、切に思います。

【リンク】

なし