昭和シェル、減配発表で株価急落

24日の東京株式市場で昭和シェル石油株が商いを伴って急反落し、前日比9.9%安の629円で引けた。前日夕に2010年12月期の年配当を18円と前期比で半減させる方針を表明し、失望売りが膨らんだ。
(日本経済新聞2010年2月25日15面)

【CFOならこう読む】

「朝方から昭和シェル株は売り気配で推移。取引成立後も大引けにかけて売り注文に押された。大幅減配の理由は現在、1000億円を投じて宮崎県で建設中の太陽電池第3工場の投資負担が
今期から本格化するためだ」(前掲紙)

会社は減配の理由を次のように説明しています。

「利益配分に関しましては、当社の経営・財務状況、金融市場動向等を考慮しつつ、株主に対する安定的、かつ魅力的な配分を実現していくことと併せて、企業価値を最大化するために必要な中長期的な成長戦略を実現すべく内部留保の充実を図ることを基本方針としております。
平成22 年度においては、当社グループの成長戦略の柱である太陽電池事業への大型投資を実行する予定であります。これは、当社の中期経営ビジョン「EPOCH2010 ~変化に克ち、未来を拓く~」に基づき、能動的にビジネスモデルを構造的に変えることで、成熟する石油産業の中にあっても、最も高い経営効率を実現することを目的とするものです。
従いまして、中間配当としては1株当たり9 円、期末配当についても1株当たり9 円の年間配当1株あたり18円を予定しております」

つまり、将来の成長のためにいまは株主還元を減らすが、これにより内部留保した資金を新規投資に充てることで株主価値を創造し、将来的に株主に報いると言っているわけです。

従って、この投資が資本コストを上回るキャッシュを創造するなら、株価は下がらずむしろ上がると考えられるわけですが、実際には株価が下がる場合が多く見られます。

高配当政策が支持される現実的な理由として、Stephen A.Ross等の「コーポレートファイナンの原理」(きんざい)は、現金収入の要望、不確実性の解消、税のアービトラージ、エージェンシー・コストを挙げていますが、どれも決定的な理由ではないとしています。

「研究によれば、多くの企業は長期の配当支払政策をもっているようである。利用可能なキャッシュ・フロート比べ、ポジティブNPVプロジェクトが少ない(多い)企業は、高(低)配当支払を行なうだろう。加えて、企業は配当水準の変動を抑えようとする。配当の安定性と一定性には、多少の価値があるように見える」(前掲書)

いずれにしても配当政策を大きく変更するのは避けるのが賢明であるということです。

【リンク】

2010年2月22日「業績予想および配当予想に関するお知らせ」昭和シェル石油株式会社[PDF]