香川大発VBが技術研究組合

香川大学発ベンチャーの自然免疫応用技術は食品関連の中小などと共同研究を進める「技術研究組合」を立ち上げた。昨年できた制度を活用し、企業間の連携を強化する。共同研究の総事業費は10年で16億円の見通し。地域の食品会社や関連の研究機関にも幅広く参加を呼びかけ、応用技研が進めている微生物の研究を生かした新事業立ち上げを加速する。
(日本経済新聞2010年3月24日17面)

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「技術研究組合とは、2009年6月の法改正で始まった制度。前身の「鉱工業技術研究組合」の設立条件などを大幅に緩和した。すべての産業技術を対象に、2以上の法人などが定款と研究の実施計画書を作り、主務大臣の認可を受ければ設立できる。法人格を持ち、契約締結や特許登録を組合の名義でできるのが特徴。そのまま事業会社にも移行でき、事業化の準備組織に利用しやすい」(前掲紙)

技術研究組合の特徴は次の通りです。


1.法人格があります
• 法人格があるので、技術研究組合の名義で、不動産の登記、特許権の登録、銀行取引、行政許認可の取得などを行うことができます。
• 事業化に向けて、特許権を一元的に管理できます。
• 責任の所在を明確にすることができます。
2.財務の健全性を確保できます
• 技術研究組合の運営費は、メンバーの賦課金によりまかなわれます。技術研究組合に欠損金が累積せず、財務の健全性を確保できます。
• メンバーは、賦課金を自社の研究開発費用として処理でき、税負担を軽減できます。
3.営利会社化できます
• 研究開発終了後は会社化し、研究成果を散逸させずに、そのまま事業化できます(会社の資本は再評価後の純資産額となります。)。
• 大学発ベンチャーや、事業化の準備組織として利用できます。
4.産学官連携に利用できます
• 大学や公的研究機関がメンバーになれるので、産学官連携が強化されます。
• 賦課金の設定は自治に委ねられます。出資金なくメンバーになれます。
• 農業や医療に関する技術を研究することもできます。
5.2者だけで、創立総会なく設立できます
• 企業と企業、企業と大学など、2者間で行う共同研究にも利用できます。
• 創立総会を経ずに、非公開で、簡易迅速に設立できます。
• メンバーの2/3以上が中小企業なら、助成金や特許料の減免を受けられます。

経済産業省 研究開発パートナーシップのウェブサイトより)

要するにLLPと株式会社のいいとこ取りをしたビークルと言えます。

税制上のメリットは次の通りです。

「運営費用をメンバーから集める“賦課金(注1)”によりまかない,メンバー企業は支払った賦課金を自社の研究開発費用と同様に費用処理できるため,税負担を軽減できる。また,支払った賦課金は研究開発税制の対象となるので,メンバー企業はその8~10%を法人税額から控除できる。さらに,技術研究組合においては,賦課金で取得した試験研究用資産(特許権など)については簿価1円まで“圧縮記帳(注2)”できるから,当該資産を取得する年度において,取得価額のほぼ全額を損金算入して税額を発生させないことができる」(http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/etc/20090723_1.html

また財務上の利点として、研究開発終了後に会社化した場合に欠損金が累積されず、その後の資金調達やIPOに支障がない点があげられます。

技術研究組合は、その組合員になろうとする二人以上の者が、その全員の同意によって定款、試験研究の実施計画等を記載した書面を作成し、主務大臣の認可を受けて設立します。

書面の提出先/問い合わせ先
経済産業省 産業技術環境局 技術振興課 技術研究組合担当

【リンク】

研究開発パートナーシップ