包括利益、正式決定先送り

国際会計基準との共通化に伴い導入される新しい利益項目の「包括利益」を巡る議論が長引いている。日本の企業会計基準委員会(西川郁生委員長)は今年3月末までに包括利益に関する会計基準を決める方針だったが、単独財務諸表での開示に企業が難色を示したため、6月末まで決定を先送りすることにした。
(日本経済新聞2010年4月7日15面)

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「包括利益の表示に関する会計基準」の公開草案は包括利益及びその他の包括利益を次のように定義しています。

・「包括利益」とは、ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち、当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分をいう。当該企業の純資産に対する持分所有者には、当該企業の株主のほか当該企業の発行する新株予約権の所有者が含まれ、連結財務諸表においては、当該企業の子会社の少数株主も含まれる。

・「その他の包括利益」とは、包括利益のうち当期純利益及び少数株主損益に含まれない部分をいう。その他の包括利益は、個別財務諸表においては包括利益と当期純利益との間の差額であり、連結財務諸表においては包括利益と少数株主損益調整前当期純利益との間の差額である。連結財務諸表におけるその他の包括利益には、親会社株主に係る部分と少数株主に係る部分が含まれる。

そして包括利益の計算は次の方法によることを指示しています。

・個別財務諸表においては、当期純利益にその他の包括利益の内訳項目を加減して包括利益を計算する。

・連結財務諸表においては、少数株主損益調整前当期純利益にその他の包括利益の内訳項目を加減して包括利益を計算する。

「公開草案は連結、単独ともに包括利益の開示を求めているが、企業側は「作業負担が重い」(日本経団連)という理由で単独での開示に難色を示している」(前掲紙)

より本質的な問題として、単独財務諸表の開示が必要であるのかということがあり、これを徹底的に議論しないといけないでしょう。

その結果単独財務諸表の開示も必要であるということになるなら、単独財務諸表で包括利益の開示が不要であるという理屈は通らないと私は思います。

【リンク】

2009年12月25日「企業会計基準公開草案第 35 号 包括利益の表示に関する会計基準(案) 」企業会計基準委員会[PDF]