日本板硝子社長に米デュポン元副社長 その2

日本板硝子は一時5%高まで上昇。前日に米デュポンの元副社長に就く人事を発表。社長探しの長期化という市場の懸念は払拭できた。とはいえ欧州事業は依然厳しく、新社長による経営戦略はこれからだ。もろ手を挙げた歓迎ではなかった。
(日本経済新聞2010年4月17日16面)

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とりあえず新社長人事は市場に受け入れられたようです。

しかし日本板硝子が真のグローバル企業に深化できるかは、まだよくわかりません。前社長が辞めた理由も何だかよくわかりませんし。

昨日紹介した岸田秀氏の「ものぐさ精神分析」(中公文庫)では日本国民の集団的気質の特徴として、内的自己と外的自己の分裂を挙げています。

岸田氏的に考えると、外的自己に従いグローバル化を進めてもうまく行かない、ということになります。外国人を社長にしても、社内を公用語にしても、それだけでは駄目だということです。

では、どうしたら良いのでしょう。

岸田氏の「日本近代を精神分析する」では次のように結論づけています。

「ペリー・ショックが日本人に与えた心の傷はまだ癒えていない。それを癒すためには外的自己と内的自己との統一が必要である。この統一が成れば、そこに自己同一性の基盤を見出すことができる。従来の統一の試みが失敗したのは、外的自己と内的自己とのどちらか一方を隠蔽あるいは排除して他方のみを自己と認め、無理やりにその半端な自己を自己の統一的全体と見なそうとしたからである。あるいは、この両自己の対立をいい加減な妥協形成によって糊塗しようとしたからである」

岸田氏がこれを書いたのは1975年ですが、いまだ状況は全く変わっていません。

日本企業がグローバル化するためには、何よりもまず日本人がもう一段成熟し、心を開く必要があると、岸田氏の本を読みながら思いました。

余談ですが、NHKの大河ドラマ”龍馬伝”で武市半平太を演じる大森南朋の人気が沸騰していると聞きます。これも内的自己の象徴とも言える攘夷派に多くの日本人が感情移入している証左と言えるかも知れません。

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