日本の長期金利の見通し – 河野龍太郎BNPパリバ証券チーフエコノミスト

日本の長期金利の見通しを描いてみよう。
政府が早期に財政再建策を打ち出し、財政規律が保たれる可能性は20%。
国債不安で金利が急上昇し、財政赤字の対応を迫られる確率が40%。
低成長で金利は低位安定のまま、突然暴発する最悪のシナリオも40%と高い。

(日経ヴェリタス2010年4月18日52面)

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このブログでも長期金利急上昇のリスクを繰り返しお話ししています。

最善と思われる1番目のシナリオを実現するために何が必要か、河野氏は次のように述べています。

「6月にも公表される中期財政フレームで、歳出を増やしたり税金を減らしたりする場合はそれに見合う財源や歳出削減策を確保するよう求める「ペイ・アズ・ユー・ゴー原則」が確立され、2011年度以降の予算案では、マニフェストに掲げた政策であっても恒久的な財源が確保されなければ実施を断念、国債発行や埋蔵金の費消で対応しない。
また「財政運営戦略」として、長期の財政再建策も同時に公表し、公的債務残高を対国内総生産(GDP)比で安定的に減らすべく、1~2%の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字達成が目標として掲げられる。向こう数年はともかく、3~4年目以降は消費税増税を含むあらゆる歳出・歳入改革の努力により、目標へ向かう経路が示される。
目標の達成メドは20年代初頭で、その段階でようやく公的債務残高の対GDP比の上昇が止まる」(前掲稿)

ペイ・アズ・ユー・ゴー原則(PAYGOルールとも言う)とは、新たな立法行為が義務的経費(現存する権限法によりその金額が決められているもの)の増加や歳入の減少を招くとき、他の義務的経費の削減か何らかの増収措置によって、これら財政収支の悪化を相殺しなければならないという決まりのことです。

90年代米国の財政再建スキームの中心は、このPAYGOルールと裁量的経費(毎年議会で決められるもの)のキャップ制でした。

米国の財政の仕組みは以下の文献が詳しく解説されています。

「米国の予算審議プロセス(Ⅰ) 〜米国の予算決議案と歳入・歳出法案の審議〜」みずほ総合研究所[PDF]

「米国の予算審議プロセス(Ⅱ) 〜CBOの財政推計と財政ルール〜」みずほ総合研究所[PDF]

【リンク】

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