株式移転による経営統合は中間段階、合併を要求ーNKSJの筆頭株主ファンド

大手損保グループのNKSJホールディングスの筆頭株主である米投資ファンド、サウスイースタン・アセット・マネジメントは21日、NKSJに傘下の損保2社の合併や共同最高経営責任者(CEO)体制の見直しを要求したことを明らかにした。合併によるコスト削減に加えて、取引先との株式持ち合いの解消などで収益力向上を迫る意向だ。
(日本経済新聞2010年4月22日4面)

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(同ファンドの)メイソン・ホーキンス氏は次のように述べています。

「持株会社は中間段階。2つの損保会社を速やかに合併して早期にコストを削減する必要がある、と述べた。

損保ジャパンの佐藤正敏社長と日本興亜の兵頭誠社長が共同CEOを務める体制には、リーダーであるCEOは一人であるべきだ、として佐藤社長が単独でCEOを務めるよう
求めた」(前掲紙)

日本はいまだM&A草創期にあります。ついこの前まで経営統合と言えば、対等の精神に基づく、という前置きが必ず付されたものです。

株式移転による共同持株会社を設立する形態での経営統合が多いのも、対等という衣を着せることができるのと、それぞれの会社がとりあえずは存続することができるので、
統合後も一定の自治を維持することができるからです。

日本企業が経営統合の際にこだわるのは、
トップ人事
役員人事
社名
本店所在地
です。

NKSJの場合で言うと、
トップ人事
共同CEO 兼 代表取締役会長 兵頭 誠 (日本興亜)
共同CEO 兼 代表取締役社長 佐藤 正敏 (損保ジャパン)

役員人事
取締役 藤井 康秀 (日本興亜)
取締役 山口 雄一 (日本興亜)
取締役 櫻田 謙悟 (損保ジャパン)
取締役 山口 裕之 (損保ジャパン)
社外取締役 6名

監査役 角川 与宇 (日本興亜)
監査役 飯田 二郎 (損保ジャパン)

社名
NK=日本興亜が先

本店所在地
損保ジャパンの本店

と見事に対等の精神に基づいた経営統合の形式を取っています。

これに加え持株会社の部室長10名の人事も両社5名ずつになっています。

しかしシナジー実現のためには早期に一つの会社になる必要があり、そのためにはホースキンス氏が言うように合併するのが望ましいと言えます。

今後日本企業でも、共同持株会社の形態ではうまく統合が進まないということで、合併に向かう事例が増えて来るものと思われます。

そのときにはどちらが主導権を握るかはっきりします。つまり買い手がどちらであるかがはっきりするということです。

そういう段階を経ることで上場会社が買収されるということが徐々に普通になっていくのだと思います。

それがどれくらい先のことになるかはわかりませんが、そのときには共同持株会社なんて意味がない、ということになっているかも知れません。

【リンク】

2009年10月30日「株式移転計画書の作成および事業計画の策定について」株式会社損害保険ジャパン[PDF]