日本に社外取締役は不要?

米国で普及している独立取締役(社外取締役)制度は日本には不要だ。株主総会より取締役会の権限が強い「間接民主制」の米国と異なり、欧州や日本は株主の「直接民主制」で、効果がないことは歴史が証明している。企業統治の改善には、株主提案権や議決権行使の活発化こそが必要だ。
(日経ヴェリタス2010年5月2日 異見達見 藤田勉)

【CFOならこう読む】

「日本では一般に、社長が独立取締役候補を指名し、持ち合い株式を保有する株主などの賛成を得て、株主総会で選任される。これに加えて、多くの会社では取締役の責任限定契約を締結し、かつ1000万円前後の年間報酬を支払う場合もある。

つまり、監視される人(社長)が、監視する人(独立取締役)の人事権を持ち、同時に多額の報酬を支払っているのである。だからこそ、巨額の赤字を計上した委員会設置会社において、独立取締役が過半数を占める指名委員会が、社長を会長に昇格させる人事を決定するようなことが起きる。最近の大手電機会社による過年度決算の大規模な訂正や社長交代理由の虚偽の公表などにも見られるように、独立取締役の経営監視機能の効果が乏しい例は多い」(前掲稿)

確かにそ藤田氏の言うように社外取締役制度は機能していない、と僕も思います。ですがそれを言うなら監査役会も外部監査人も機能していないから、全部止めてしまえということになってしまいます。

「「直接民主制」をとる日本において、企業統治(コーポレートガバナンス)の改善に不可欠であるのは、独立取締役の増加ではなく、株主による直接的な株主権の行使、たとえば株主提案権や議決権行使の活発化である。加えて、株式対価のTOBを実質的に解禁し、支配権市場の活性化によって、経営規律の向上を目指すことが期待される。

これらが実現すれば、英国同様、独立取締役が経営監視効果を持つことが大いに期待できよう」
(前掲稿)

より本質的な問題として、日本企業は経営者(従業員)による統治されているという事実があります。ここが変わってこない限り、株主提案権の行使は物言う株主として疎んじられ、支配権の移動を伴う敵対的TOBは濫用的買収であるとして、持ち合い株式を保有する株主が鉄壁の防御壁をはりめぐらせます。

僕は以前からお話ししているように、当面は立法と行政の指導によりコーポレートガバナンスを改善していくほかないと考えています。

【リンク】

なし