欧州、銀行間金利が上昇

ギリシャ危機を受けて動揺が広がる欧州市場で、銀行間の「相互不信」が強まってきた。金融機関のドル資金の調達コストを示すロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の3ヶ月物金利は21日、昨年7月下旬以来の高水準となる0.5%近くまで上昇。欧州債券市場では、安全性が高いとされるドイツ国債への資金流入が目立ち始めた。リスク警戒がさらに強まれば、市場の信用収縮が広がる恐れも否めない。
(日本経済新聞2010年5月22日1面)

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「ソブリンリスク(政府債務の信認危機)は歴史的に、政治の弱さから起こってきた」。19日、米ボストンに世界の投資家を集めて開いた会合で、金融史が専門のハーバード大教授、ニーアル・ファガーソン氏が力説すると、会場の喝采を浴びた。
目先の支持率を意識したばらまき財政や不十分な税収。財政の悪化は景気の低迷はもちろん、リーダーシップ無き政治が根底にあると説いた」(前掲紙)

5月17日にエントリーで、EUでは財政や直接税に関する政策は各国に委ねられてはいるが、経済統合のために「4つの自由」(財・人・サービス・資本の自由な移動)を保障する法的枠組をつくっており、これを阻害する加盟国の国内法は内外無差別の原則に反するとして禁止されていることを紹介しました(2010年5月17日エントリー「ユーロはギリシャに勝てるか」)。

最近、Yale大学のGraetz教授とHarvard大学のWarren教授(2人とも米国を代表する租税専門家です)が書いた”Income Tax Discrimination Political and Economic Integration of Europe”という論文を読みました。

2人は、EU加盟国が自国の経済を刺激するために税制を利用することをクロと判定する欧州裁判所(ECJ)の対応は、EU加盟国全体に深刻な税収不足を招くと指摘しています。

これを回避するには、直接税に関し全ての加盟国が調和化するという解決策があるのですが、その実現可能性は極めて低いとも書いています。

「リーダーシップ」を発揮しようにも、それが出来ないのが今のEUの姿なのではないでしょうか。

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