三井物産有利子負債の長期比率引き下げ

三井物産は有利子負債の長期比率を4年ぶりに引き下げる。財務の安定性をにらみ2010年3月期末に93%まで高めた同比率を90%まで引き下げる。金融危機による市場の混乱は後退したとみているが、欧州財政問題を見据えて引き続き高い水準を維持する。
(日本経済新聞2010年5月28日15面)

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上場会社の有利子負債に関する方針は、それぞれ個性があって面白いですね。昨日は実質無借金経営を標榜するパナソニックを取り上げましたが、今日は三井物産です。

「同社の社債や長期借入金などを合わせた長期負債(一年以内の償還を控えた分も含む)の比率は通常80%前後で推移していた。金融危機の混乱を受けて、財務の安定性を優先して引き上げ、9割を超す水準にまで高まっている」(前掲紙)

長期負債比率を8割-9割とする、というのが三井物産の財務方針なのかも知れません。

三井物産は、ネットDER(「ネット有利子負債」を株主資本で除した比率)により、負債の水準をコントロールし、さらに長期負債比率により長期負債の水準を決定していると思われます。

「平成22年3月末のネット有利子負債は2兆557億円となり、平成21年3月末の2兆5,151億円から4,594億円減少しました。ネットDER(*3)は0.92倍となり、平成21年3月末の1.34倍から0.42ポイント改善しました。

(*3) ネットDERについて
当社は「ネット有利子負債」を株主資本で除した比率を「ネットDER」 と呼んでいます。当社は「ネット有利子負債」を以下の通り定義して、算出しております。すなわち、 短期債務及び長期債務の合計により有利子負債を算出。
有利子負債から現金及び現金同等物、定期預金を控除した金額を「ネット有利子負債」とする。
当社の有利子負債の主要な項目は長期債務(1年以内期限到来分を除く)から構成されます。当社の資本支出の資金需要に柔軟に対応し、将来における金融市場の不測の機能低下の下においても債務返済に応えられるよう当社は、厚めの現金及び現金同等物を維持しています。こうした方針のもと、当社は、ネットDERは当社の債務返済能力と株主資本利益率 (ROE)向上のための財務レバレッジの関係を検討するための有効な指標と考えています。 」
(三井物産 平成22年3月期決算短信 22頁)

【リンク】

「平成22年3月期 決算短信〔米国会計基準〕」[PDF]

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資金調達
財務レバレッジ

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