「メガ百貨店」勝ち組なし

縮む内需に対応すべく、大再編時代に入った流通業界。だが新たな成長につながるはずだった百貨店やスーパーの合従連衡は、なかなか規模を利益に結ぶつけられない。
流通M&Aは果実を得ることができるのか。

(日本経済新聞2010年6月2日15面)

【CFOならこう読む】

2003年6月 ミレニアムリテイリング(そごうと西武)発足
2007年9月 J・フロントリテイリング(大丸と松坂屋)誕生
2008年4月 三越伊勢丹ホールディングス発足
2008年10月 高島屋とエイチ・ツー・オーリテイリング(阪急と阪神)が2011年までの経営統合発表
2010年3月 大丸と松坂屋合併
高島屋とエイチ・ツー・オーリテイリング、統合断念

「生き残りを目指して相次ぎ誕生した売上高1兆円クラスの「メガ百貨店」が統合効果を引き出せない。
歴史や経営理念の異なる老舗統合は試行錯誤の連続だ。大丸・松坂屋は統合前に掲げた本部による商品一括仕入れを中止した。仕入コストの削減を狙ったが、「地域ごとの需要が違いすぎて、機能しなかった」」(前掲紙)

規模のメリットをお題目に掲げるM&Aは、うまくいかない場合が多い、ということをこのブログで何度かお話ししています。

規模のメリットは、究極的には単位当たりの固定費を引き下げることにより実現します。
流通業界でM&Aが求められるのは、需要に比し供給が過剰であるので、固定費を引き下げるためにはブランドの統一、店舗閉鎖等のリストラといった大きな痛みを必要とします。

しかしこれまでに行なわれた百貨店の統合にはその覚悟が感じられません。共同持株会社の下に従来通りのブランドを付した会社をぶら下げただけで規模のメリットが得られるはずはないのです。

供給が過剰なのだから、供給を減らすしか百貨店業界が生き残る道はない、という現実をもっと直視すべきです。そういう意味では、強者が弱者を力づくで吸収する、というタイプの再編がこの業界には必要なのかも知れません。

強者がいれば・・・、の話ですが。

【リンク】

なし