税調専門委が中間整理、法人税減税は課税ベース拡大とセット

政府税制調査会の専門家委員会(委員長:神野直彦東大名誉教授)が22日公表した税制抜本改革に向けた「中間的な議論の整理」は、増税色の濃い内容となった。消費税の増収の必要性に言及したのに加え、所得税も収入の多い人から税をより多く得る増税の方向性を打ち出した。財政破綻を避け「安心と活力ある社会」を実現するため、「純増税」へとカジを切った形だ。
(日本経済新聞2010年6月23日5面)

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法人税については、次の議論が行なわれています。

「○ 我が国の法人所得課税の税率の水準は、国税と地方税を合わせた実効税率で見ると、国際的に高い水準にある。とりわけ、近年経済発展の著しい近隣の東アジア諸国と比較すると高い。
○ 経済のグローバル化が進展する中で、企業立地を確保し、雇用の創出・維持を図るためには、法人実効税率の引下げを検討する必要。
○ 法人税率の引下げは、株主のみに利益をもたらすものではなく、雇用並びに成長の基盤である企業活動が国内にとどまることや対内直接投資の拡大などにより、国民に成長の恩恵が行き渡ることに繋がることに留意する必要。この他、法人税制のあり方を考える際に雇用の観点を重視すべきとの意見があった。
○ 他方、企業の公的負担は法人所得課税に止まるものではなく、社会保険料の事業主負担も含めた企業負担全体の水準で見れば、我が国の企業の公的負担は、欧米の先進諸外国と比較して高いとは言えないとの意見があった。
○ 企業の立地は、必ずしも税負担の多寡のみで決まるものではなく、市場全体の成長性や市場へのアクセス、インフラの整備、人件費や各種公共料金の価格といった要素によっても左右されるこ とに留意する必要。
○ 法人税率の引下げを行う場合であっても、現下の我が国の厳しい財政状況に鑑みれば、これに要する財源の確保と併せて行うことが前提であり、租税特別措置の見直しなどの課税ベースの拡大と併せて実施すべき。
○ その際、ドイツの例も参考にしつつ、課税ベースの拡大と併せ、所得税や消費税など他税目の改革と組み合わせて実施すべきとの意見や、金融所得課税とセットで議論すべき、との意見があった。 」(2010年6月22日 「「議論の中間的な整理」 )

租税特別措置の見直しは必要だと思いますが、そのことと課税ベース拡大を同一の次元で議論するのはいかがなものかと思います。国際競争力強化のためには、法人税率の引き下げが必要なのではなく、法人税減税が必要なのです。

課税ベースを拡大することで法人税負担は従前と変わらないのであれば、何の意味もありません。

【リンク】

2010年6月22日「議論の中間的な整理」専門家委員会委員長 神野 直彦[PDF]