デンソー、タックスヘイブン対策税制の対象になるとして追徴課税

デンソーが名古屋税局から税務調査を受け、2009年3月期までの2年間で計114億円の申告漏れを指摘されたことが1日、分かった。シンガポールの子会社が得た配当について、タックスヘイブン対策税制の対象になるとしてデンソーの所得と認定した。
(日本経済新聞夕刊2010年7月1日17面)

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日本企業が、税負担の著しく低い国・地域に子会社等(「外国子会社」)を設立し、その外国子会社を通じて国際取引を行なうことによって、直接国際取引した場合より税負担を不当に軽減・回避し、日本における法人課税を免れることができます。

タックスヘイブン対策税制は、このような外国子会社を利用した租税回避行為に対処するため、外国子会社の所得のうち、その持分に相当する額を、日本の親会社の所得に合算して課税する制度です。

「関係者によるとシンガポールの全額出資子会社で財務、物流機能を担うデンソー・インターナショナル・アジア(DIAS)が、タイやフィリピンなどにある自動車部品製造会社など複数の出資先から配当をうけていた。

国税局はDIASは傘下企業からの配当が主な事業と認定。配当は親会社に帰属する所得として、タックスヘイブン対策税制の課税対象になると判断した」(前掲紙)

外国子会社が、独立企業としての実体を備え、かつ、それぞれの業態に応じ、その地において事業活動を行うことに十分な経済合理性があると認められる場合として、次のすべての基準を満たす場合には、タックスヘイブン対策税制の課税対象とはなりません。

1.事業基準
主たる事業が株式の保有等、一定の事業でないこと
2.実体基準
本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を保有すること
3.管理支配基準
本店所在地国において主たる事業の管理、支配及び運営を自ら行なっていること
4.次のいずれかの基準
(1) 所在地国基準(主として本店所在地で事業を行っていること)
下記以外の業種に適用
(2) 非関連者基準
卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業、航空運送業に適用

本件では1の事業要件を充足しないと国税に認定されたものと思われます。

これに対し、デンソーはプレスリリースで次のように述べています。

「タックスヘイブン対策税制上の観点からも適用除外要件を十分に充足するだけの実態があると判断し適正に申告をして参りました。調査中においてもそのような実態を十分に説明を実施したのにも関わらず、更正処分に至ったことは遺憾の極みであり、到底受け入れられるものではございません。
従いまして、当社は、法令に従い納税を実施するとともに名古屋国税局に対して異議申立てを行い、当社主張の正当性を訴えていく予定です。」(「タックスヘイブン対策課税に基づく更正通知の受領について」2010年7月1日)

昨日のヤフーに続き、デンソーも訴訟も辞さない態度で臨むということです。

【リンク】

「タックスヘイブン対策課税に基づく更正通知の受領について」