割引投資回収期間法-【続き】

昨日の記事についてgonchan様より次のようなご質問を頂戴しました。

「半分質問になりますが、上場企業が投資の割引率を用いる場合は、やっぱりWACCじゃないといけないように思いましたが。投資家の目線で投資採算をはじいてほしい。」

この点、昨日と同様ブリーリー/マイヤーズの”コーポレートファイナンス”から引用する形でお答えします。

「会社の資本コストは、その会社の発行しているすべての証券から成るポートフォリオの期待収益率と定義される。これは、会社の資産に対する投資についての資本の機会費用であるので、その会社の平均的なリスクのプロジェクトについての割引率として適切なものである。

(中略)

しかし、新しいプロジェクトが会社の既存の事業に比べ、よりリスクが高いか、あるいは低い場合には、会社の資本コストは正しい割引率ではないことになる。プロジェクトは、原則としてそれぞれの(リスクに応じた)資本の機会費用によって評価されるべきである」(第8版 254頁-255頁)

したがって、スカイツリーのプロジェクトが東武鉄道の既存事業と比較してリスクが異なるなら、このプロジェクトのシステマティックリスクを反映した資本コストによりプロジェクトの評価は行なわれるべきということになります。

実際多角化経営を行なっている上場企業の場合、事業部ごとに異なる資本コストを用いてプロジェクトの評価を行っているケースが多いように思います。

但し、3%という割引率がシステマティックリスクを反映した適切な割引率であるかどうかは疑問です。

またそもそも割引投資回収期間法は投資案件をざくっとふるいにかける時に使われる方法で、ここで回収期間25年と計算されても、それがどの程度価値創造に寄与するのかわかりません。

鉄道の回収期間40年と比較してスカイツリーは25年だからこのプロジェクトは投資効率が良いとは単純に言えないと思います

gonchan様、いつも示唆に富むコメントありがとうございます。