社長の報酬、業績との連動性低く

社長をはじめとする役員の報酬をどのようにして決めるか。株主や投資家の立場では、社長力の発揮度合いに応じて決めるのが合理的に思えるが、実際はどうか。
(日経ヴェリタス2010年7月25日49面)

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「コンサルティング会社のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)が2010年3月期に1億円以上の報酬を受け取った上場企業の役員287人について調べたところ、報酬の約8割が業績と連動しない固定型であることがわかった。業績賞与やストックオプションなどの業績連動型は約2割だった。欧米ではこの比率が逆になっており、日本企業の役員報酬は固定型中心と言えそうだ」(前掲紙)

記事の中で、業績連動報酬の割合が少ない理由として、税務上の損金算入要件が厳しく、次年度の年棒で調整するケースが多いことが挙げられています。

法人税法上、利益連動給与の損金算入要件は以下のように定められています。

「第三十四条
一項三号 同族会社に該当しない内国法人がその業務執行役員(業務を執行する役員として政令で定めるものをいう。以下この号において同じ。)に対して支給する利益連動給与で次に掲げる要件を満たすもの(他の業務執行役員のすべてに対して次に掲げる要件を満たす利益連動給与を支給する場合に限る。)
イ その算定方法が、当該事業年度の利益に関する指標(金融商品取引法第二十四条第一項 (有価証券報告書の提出)に規定する有価証券報告書((3)において「有価証券報告書」という。)に記載されるものに限る。)を基礎とした客観的なもの(次に掲げる要件を満たすものに限る。)であること。
(1) 確定額を限度としているものであり、かつ、他の業務執行役員に対して支給する利益連動給与に係る算定方法と同様のものであること。
(2) 政令で定める日までに、報酬委員会(会社法第四百四条第三項 (委員会の権限等)の報酬委員会をいい、当該内国法人の業務執行役員又は当該業務執行役員と政令で定める特殊の関係のある者がその委員になつているものを除く。)が決定をしていることその他これに準ずる適正な手続として政令で定める手続を経ていること。
(3) その内容が、(2)の決定又は手続の終了の日以後遅滞なく、有価証券報告書に記載されていることその他財務省令で定める方法により開示されていること。
ロ その他政令で定める要件」

したがってそもそも同族会社である場合には、利益連動給与の損金算入は認められません。

また(2)に規定する報酬委員会の決定に準ずる適正な手続きとは法人税法施行例に規定があります。

「9 法第三十四条第一項第三号 イ(2)に規定する政令で定める手続は、次に掲げるものとする。
一 法第三十四条第一項第三号 に規定する内国法人(委員会設置会社を除く。)の株主総会の決議による決定
二 法第三十四条第一項第三号 に規定する内国法人(委員会設置会社を除く。)の報酬諮問委員会(取締役会の諮問に応じ、当該内国法人の業務執行役員の個人別の給与の内容を調査審議し、及びこれに関し必要と認める意見を取締役会に述べることができる三以上の外部の委員から構成される合議体(その委員の過半数が当該内国法人の第六項各号に掲げる役員又は使用人となつたことがない者であるものに限る。)をいい、当該業務執行役員及び当該業務執行役員と同条第一項第三号 イ(2)に規定する特殊の関係のある者(次号において「業務執行役員関連者」という。)が委員となつているものを除く。)に対する諮問その他の手続を経た取締役会の決議による決定
三 法第三十四条第一項第三号 に規定する内国法人が監査役会設置会社(業務執行役員関連者が監査役になつている会社を除く。)である場合の取締役会の決議による決定(監査役の過半数が当該算定方法につき適正であると認められる旨を記載した書面を当該内国法人に対し提出している場合における当該決定に限る。)
四 前三号に掲げる手続に準ずる手続」

いずれにしてもハードルは高いと言えます。

企業にとって最も希少な資源である経営者のリターンは業績に連動して決定されるのが当然であるのに、税法がそれに対してあれこれと条件を付けるのは筋が違うように思います。

少なくとも公開会社の場合には、支給額について株主総会決議があれば損金算入は認められるべきです。

税法には、日本企業の国際競争力という観点から見た場合、単に税率を以外にも改正すべき点がたくさんあると思います。

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