エクスチェンジ・テンダー・オファー(自社株対価のTOB)容易に

経済産業省は企業のM&Aや事業再編を促すため、2011年度をメドに自社株を活用するTOBの条件を特例的に緩和する。産業活力再生法(産活法)で国の認定を受けた企業が対象で、完全子会社化のための少数株主からの株式買い取りなども容易にする。これらの緩和は会社法見直しで議論されるが、法改正は13年度になる見通し。円高進行やアジア企業の攻勢をふまえ、企業再編を通じた国際競争力の強化が急務と判断した。
(日本経済新聞2010年9月24日1面)

【CFOならこう読む】

「自社株を使うTOBは現在も可能だが、裁判所が選ぶ検査役の調査などが必要。
TOBでは相手の企業の株価を高めに評価するケースが多く、利益を損ねる恐れのある自社の既存株主の理解を得るための総会での特別決議なども求められる。
これらの手続きTOBの障害になっているため、経産省は対象企業には検査役による株式価格の評価や特別決議を免除する方向で検討を進める」(前掲紙)

会社法上の論点については、金融庁のコーポレート・ガバナンス連絡会議でも議論されています。

「日本企業が、自社の株式を対価として、他の日本企業又は海外企業の株式を公開買付けにより取得することは、会社法上の規制(現物出資規制)との関係で実務的には行われていない。会社法上、現物出資については、原則として検査役調査及び発行企業の取締役等の填補責任規制の対象となること、現物出資が有利発行に該当すれば発行企業の株主総会決議が必要となること等が論点として挙げられている。
これらの論点については、日本企業による企業買収の多様化・グローバル化のニーズを見極めつつ、株主・投資者保護を図りながら株式を対価とする公開買付けの実効性を高める観点から、現物出資を用いた他の取引類型における実態や、事前規制及び事後措置のあり方なども踏まえ、必要な検討をお願いしたい。 」

法制審議会会社法制部会(平成22年6月23日(水)開催)提出資料 [PDF]

これについては私のブログでも2008年2月4日にポスティングしていますのでご参照下さい(「エクスチェンジテンダーオファー(自社株対価のTOB)が日本で出来ない理由」)。

しかし会社法上(又は産活法上)手当てがなされても、税法上手当てがなされないとTOBに応じた株主は株式譲渡益について課税されてしまう現状のままでは企業はエクスチェンジ・テンダー・オファーを実行する
ことはできません。

2011年の産活法の改正に合わせ、公開買付けに応募した対象会社の株主に係る譲渡益課税の繰延措置を講ずる必要があります。

【リンク】

2010年6月23日「金融・資本市場の観点から重要と考えられる論点」金融庁総務企画局企業開示課長 三井 秀範 [PDF]