年金型保険の二重課税の還付方法決まる

財務省と国税庁は1日、年金方式の保険に対する相続税と所得税の二重課税問題を巡って、個人が納め過ぎた所得税の還付を今月下旬から始めると発表した。
(日本経済新聞2010年10月2日 7面)

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元本と運用益をどう切り分けるかについて、8月6日のポストで基本的な考え方をお話ししました。

一部以下の再掲します。

相続税法24条1項は、年金受給権の評価を次のように定めています。

「有期定期金については、その残存期間に応じ、その残存期間に受けるべき給付金額の総額に、次に定める割合を乗じて計算した金額。ただし、一年間に受けるべき金額の十五倍を超えることができない。

残存期間が五年以下のもの           百分の七十
残存期間が五年を超え十年以下のもの      百分の六十
残存期間が十年を超え十五年以下のもの     百分の五十
残存期間が十五年を超え二十五年以下のもの   百分の四十
残存期間が二十五年を超え三十五年以下のもの  百分の三十
残存期間が三十五年を超えるもの        百分の二十」

今回の保険は10年間にわたり年金が支払われるものなので、年金総額×60%が相続税評価額ということになります。

年金現価係数表を見ると、この場合の運用利回りは10%超となります。今の市場環境から見ると相当に高いと言えます。この運用利回りの相当する部分については所得税の課税対象となると思われます。

今回の判決では、第1回目の年金は被相続人の死亡日に受給しているので、年金額=現在価値なので、全額所得税の課税対象とならないと判示しているだけなので、以降の年金受給額のうちどれだけが所得税の課税対象とするかは今後の検討課題となります。」(https://cfonews.main.jp/cfonews/?p=2199

財務省と国税庁は昨日、相続又は贈与等に係る生命保険契約等に基づく年金の税務上の取扱いの変更等の方向性についてという文書を発表し、この中でこの中で平成17年分以降のの所得税の還付についてその方法が説明されています(平成16 年分以前の所得税の還付について対応の方向を発表しました)。

それによると「保険年金」について、税務上、次のように取扱いが変更されることになります。

(変更前)各年の「保険年金」の所得金額(年金収入額-支払保険料)の全額に所得税を課税。

(変更後)各年の「保険年金」を所得税の課税部分と非課税部分に振り分け、課税部分の所得金額(課税部分の年金収入額-課税部分の支払保険料)にのみ所得税を課税。
「保険年金」支給の初年は全額非課税で、2年目以降、非課税部分が徐々に減少していく簡易な計算方法により所得税非課税部分を算定していきます(支給開始年から終了年に向けて、非課税部分は、段階的に減少していくことになります。)。

さらに文書の5ページに課税部分と非課税部分の切り分け方について具体的な説明があります。

「6.保険年金の金額に係る課税部分と非課税部分の計算方法
保険年金に係る課税部分と非課税部分は、年金支給初年は全額非課税とし、2年目以降、非課税部分が同額ずつ階段状に減少していくという簡易な方法により計算します。
この課税部分と非課税部分の計算方法は、定額払いの確定年金に限らず、終身年金や有期年金、逓増型や逓減型などの年金種類や支払方法、さらにはその支給期間にかかわらず用いることができます。
なお、課税部分に係る所得金額は、課税部分の年金収入額から対応する支払保険料を控除して計算します。
(参考)保険年金の課税・非課税部分の振り分け

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(計算例)支払期間10 年の確定年金を相続した方の支払年数5年目の所得金額の計算(年100 万円定額払い、保険料総額200 万円の場合)

① 1課税単位当たりの金額:1,000 万円 × 40% ÷ 45 マス = 8.8 万円
(課税部分) (課税単位数){10 年×(10 年-1年)÷2}
② 課税部分の年金収入額:8.8 万円 × 4年 = 35.2 万円
(経過年数)支払開始日からその支払を受ける日までの年数
③ 必要経費額:35.2 万円 × 200 万円 ÷ 1,000 万円 = 7 万円
(保険料総額) (支払総額)
④ 課税部分に係る所得金額:35.2 万円 - 7 万円 = 28.2 万円」

私がお話しした理論的な計算方法によると、

1年後の100万円の所得税課税部分は、100万円-(100万円×1/(1+0.1)=9.1万円

2年後の100万円の所得税課税部分は、100万円-(100万円×1/((1+0.1)×(1+0.1))=17.4万円

3年後の100万円の所得税課税部分は、100万円-(100万円×1/((1+0.1)×(1+0.1)×(1+0.1))=24.9万円

となり、財務省&国税庁方式のように階段状にはならないのですが、事務処理コストを考えるとこれはこれでアリかな、とは思います。

余談ですが東大の中里教授が、これから発売されるジュリスト(号数不明)に教授が考える切り分け方についていくつの方法を提案されたそうです。興味がある方はご覧になってみてください。

【リンク】

2010年10月1日「相続又は贈与に係る生命保険契約書等に基づく年金の税務上の取り扱いの変更などの方向性について」国税庁 [PDF]