エルピーダ、台湾合弁会社を子会社化 純資産を増やすため?

エルピーダメモリ、台湾合弁を子会社化 生産調整などで主導権

エルピーダメモリは2009年3月末までに、台湾の合弁生産会社を連結子会社化する方針を固めた。合弁相手の力晶半導体が保有する株式を一部取得し、出資比率を52%程度に引き上げ経営権を握る。半導体市況の急激な悪化に対応、需要動向に応じた生産調整や投資をエルピーダ主導で実施できるようにし、グループの経営安定化につなげる。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D2700C%2027112008&g=S1&d=20081127

【CFOならこう読む】

子会社化の狙いは、純資産を増やすことにあるのではと今日の新聞に書かれています。


「一方、財務面に視点を移すと、子会社化には別の意味がある。エルピーダは9月末時点で3000億円強の有利子負債があり、このうち800億円に純資産維持に関する「財務制限条項」が付く。10月に融資枠を使って借り入れた1100億円にも同様の条項があり、いずれも期末の純資産額が1年前の75%を下回ると条項に抵触する。「抵触しても銀行が即座に返済を求めることはない」(エルピーダ)が、財務の安定性は低下する。
前期末の純資産は3478億円で、この75%は2608億円。今期の最終赤字額は900億円を超えそうなため、純資産額が大幅に目減りし、条項に抵触する可能性が高まっていた。子会社化で連結純資産が600億円程度増えるため、今期は条項抵触を回避できそうだ。」

(日本経済新聞2008年11月28日11面)

エルピーダの台湾合弁会社レックスチップエレクトロニクスに対する出資比率は48.8%。同社はエルピーダの持分法適用会社です。これを合弁相手から株式の一部譲渡を受けることにより、出資比率を52%まで高めるとのことです。

キャッシュで株式を取得するということは、対象会社の純資産をキャッシュで買うことを意味し、等価交換であるので連結上純資産の増加はないように思えます。

それでは上記記事の「子会社化で連結純資産が600億円程度増える」とは何のことを言っているのでしょうか?持分法適用会社から連結子会社になることで何が変わるかを考えてみればその答えがわかります。

その答えは少数株主持分です。連結子会社になることで合弁相手の純資産に対する持分が、少数株主持分として純資産の部に計上されるのです。

少数株主持分が純資産の部に計上されるようになったのは「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(2005年12月9日公表)施行以降で、それ以前は負債の部と資本の部の中間に独立の項目として表示されていました。これが純資産の部に表示されるようになったことから、連結子会社が増えれば少数株主持分の分だけ純資産が増えることになったのです。

もっとも少数株主持分は親会社に帰属するのではなく、だから株主資本以外の項目として表示されるわけで、財務制限条項で縛るべきは純資産ではなく株主資本とすべきかもしれませんね。

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なし