確定拠出年金の充実?

追加経済対策、事業規模最大の27兆円 首相「消費税上げ3年後」

政府は30日、米国発の金融不安による景気減速などに対応する追加経済対策を決定した。融資枠拡大などを含めた事業規模は過去最大規模の約27兆円。実質的な財政支出となる「真水」は約5兆円で、財源には財政投融資特別会計などの「埋蔵金」を活用、赤字国債の発行は回避する。税制抜本改革に関し、麻生太郎首相は同日の記者会見で、早ければ3年後に消費税率を引き上げる考えを表明した。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20081031AT3S3001W30102008.html

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追加経済対策で、確定拠出年金(日本版401k)の充実も盛られた。具体的には、企業が拠出する掛け金に従業員が上乗せして資金を出す「マッチング拠出」を認め、個人が長期的に株式を買いやすい環境が整備される。

確定拠出年金とは、掛金を確定して、給付は運用次第で決まるタイプの年金制度です。
確定拠出年金の特徴として、

・年金資産を自分で運用し、その結果に応じて年金額が決定される。
・年金資産が個人別に区分され、残高の把握や転職時の資産の移行が容易である。
・企業規模を問わず実施することが可能である。

といった点があげられます。
(企業年金連合会HP http://www.pfa.or.jp/top/qa/qa02.html#q4

確定拠出年金には自営業者等が加入できる「個人型年金」(掛金は個人が拠出)と、企業が導入し、従業員を加入させる「企業型年金」(掛金は企業が拠出)の2タイプがあります。それぞれの拠出限度額は次の通りです。

●企業型
厚生年金基金、確定給付企業年金、適格退職年金を実施していない場合
月額 4万6千円
厚生年金基金、確定給付企業年金、適格退職年金を実施している場合
月額 2万3千円
●個人型
自営業者等                     月額 6万8千円
(国民年金基金等の掛金と合算して)
厚生年金保険の被保険者
(会社が企業型確定拠出年金、厚生年金基金、確定給付企業年金、適格退職年金のいずれも実施していないこと。)
月額 1万8千円

(厚生労働省HP
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/kyoshutsu/gaiyou.html

確定拠出年金の最大のメリットは、その税制にあります。


これは単に拠出金額が所得控除されるというだけでなく、実質的にキャピタルゲインに対する税金が免除されることを意味します。

この点マイロン・ショールズ他の「タックス・アンド・ビジネス・ストラテジー」(邦題「MBA税務工学入門」中央経済社)は、次のように説明しています。

「年金基金に拠出された$1は、n年後には$(1+R)nとなるが、年金支払時に、この投資収益累計額の全額に対して税率tで課税されるとした場合、税引後の手取り額は$(1+R)n(1-t)となる。年金基金に対する当初の投資額は($1)は、税効果(税引)後で考えた場合、(拠出時に投資支出額が全額損金算入されているために)$(1-t)で済むことから、税引後投資支出額に対する税引後投資収益率は、次のように計算される。
{1/(1 -t )}(1 +R ) n (1 -t ) = (1 +R ) n
但し、R=税引前運用利回り

n =期間
t  =通常税率  」

にも関らず、この制度は日本では全く認知されていません。
2008年8月31日現在の確定拠出年金の施行状況は以下の通りです。

企業型年金の規約数等
企業型年金承認規約数  2,811件
企業型年金加入者数   約3,000千人(平成20年7月末)(速報値)
実施事業主数      10,822社

個人型年金の加入者等(平成20年7月31日現在)
第1号加入者      38,358名
第2号加入者      58,499名
計96,857名(資格喪失者を除く)

事業所登録       53,145事業所
登録運営管理機関    213社
(厚生労働省年金局発表)

 

拠出限度額が小さすぎることが日本版401kが広く浸透して行かない原因であるように思います。これを機会に拠出限度を大きく拡張し、政府が401kの税務メリットを国民にくりかえし、わかりやすく説明することで、この制度は日本でも認知されるようになると私は思います。

【リンク】

なし