製作委員会方式によるアニメ制作

委員会方式で取り分減る 版権確保模索も

アニメやゲーム、漫画。日本の文化が世界で存在感を高めている。だが追い風のわりに関連する上場企業の業績は伸び悩んでいるのが実情だ。クール・ジャパンの憂鬱ー構造を探ってみた。
(日本経済新聞2008年11月20日 14面 クール・ジャパンの憂鬱)

【CFOならこう読む】

記事はコンテンツ制作会社の業績が伸びないひとつの理由に「製作委員会方式」を挙げ、次のように指摘しています。


「従来、アニメはテレビ局や玩具メーカーの資金で制作され、制作会社も多いときには権利の半分以上を持った。ところが広がる「委員会」方式のもと、現在は広告代理店や出版社などへと出資企業の幅が拡大。制作会社の出資力の制約などもあって、持っている権利は、全体の10%前後に落ちているとみられる。」

クール・ジャパンが世界でどれだけ評価されようと、現場が疲弊するような構造では発展が望めません。メジャースタジオ以外の米国の映画製作の場合、「ネガティブピックアップ」により資金調達をするのが一般的です。

「インディペンデント映画の製作者たちはスタジオから100%資金調達を受けないので、自分達で資金調達します。北米での配給権の「ネガティブピックアップ」とメジャーな地域の「プリセール」の組み合わせで、配給契約を担保に金融機関から借り入れして、完成保証ボンドをつけるのが従来の形です。」
(「コンテンツ・ファイナンス」(松田政行著 日刊工業社)

ネガティブピックアップとは次のようなものです。

「ネガティブピックアップとは、完成保証による完成リスクのヘッジと、MG(MinimumGuarantee)による興行リスクのヘッジを組み合わせてデットファイナンスを行う一種のストラクチャードファイナンスであり、欧米ではスタジオに属さないインディペンデントプロデューサーによる映画製作資金の調達において用いられている。なお、MGとは、配給会社等の販売会社が映画製作者に支払う分配金に最低保証額を設定するものであり、映画製作者の観点からはMGの範囲において興行リスクをヘッジする機能がある。また、配給契約の締結時においてMGに相当する金額が配給会社等から映画製作者に支払われるケースもあるが、ここで想定するのは原則として映画の完成、引渡しを条件として、MGに相当する金額が支払われるケースである。
典型的なネガティブピックアップでは、インディペンデントプロデューサーは映画の完成を前提とした配給契約を配給会社と締結する。契約において配給会社は、完成された映画の引渡時に、プロデューサーに対する映画の配給からの分配金として一定の金額を前払いすることが定められている。この前払い額がMGに相当するが、欧米では映画の完成に必要なコストとして見積られた金額がMGとして設定されることが多い。
そしてプロデューサーはこのような配給契約を担保として、銀行やその他の債権者から資金調達し、映画を製作することが可能となる。プロデューサーに対する債権は配給契約において定められた前払い金によって返済される。」  (「日本型映画完成保証に関する調査研究報告書」 独立行政法人経済産業研究所)

つまりネガティブピックアップの前提として完成保証会社から完成保証を受けることが不可欠なのです。日本では、完成保証の法的位置付けが不明確であること、完成保証会社の役割は、単なる保証を行うだけでなく、予算コントロール、製作の引継ぎ等多岐に渡るため、適当な担い手が見つからない、といった理由から完成保証をつけるという実務が定着していません。

私は、前職が映像ディレクターということもあり、人一倍この分野には関心があるのですが、制作サイドに正当な報酬が落ちるスキームを構築するのに苦慮している、というのが実情です。

【リンク】

図解コンテンツ・ファイナンス―「著作権信託」で資金調達が変わる
松田 政行

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