キリンHD 豪コカコーラ(CCA)買収

キリンHD、豪コカ・コーラに買収提案 4880億円投入

キリンホールディングス(HD)は17日、豪清涼飲料大手コカ・コーラ・アマティル(CCA)に買収提案したと発表した。傘下のオーストラリアのビール大手ライオンネイサンを通じた買収総額は80億豪ドル(約4880億円)で、国内食品会社による海外企業の買収では過去最大。少子高齢化などを背景に国内市場が縮小するのに対応し、海外での営業基盤を一気に拡大する。

http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2F1700O%2017112008&g=S1&d=20081117

【CFOならこう読む】

本件の概要は次の通りです。

・ LN社が提示したCCA社買収金額は、総額約80億豪ドル(約4,880億円)。・ CCA社株主に対する対価の支払いは、現金、LN社株式、現金とLN社株式の組み合わせのいずれか選択可能。

・ LN社は、CCA社株主の受取対価として、約45億豪ドル(約2,745億円)の現金およびLN社株式約346百万株を提示。

・ 買収対価のうち現金部分の調達は以下を予定:
LN社の株主総会における承認に基づく、KH社を引受先とする総額37.6億豪ドル(約2,294億円)の第三者割当増資により、大部分の現金を調達予定。この取引によりKHはLN社の普通株327百万株を取得予定。一部についてはLN社の負債による調達を予定。

・ 本件は、LN社およびCCA社の株主総会における承認、豪州およびニュージーランドの公正取引委員会、ならびに、外国投資審査委員会等の審査を含む規制当局の承認を必要とする。

・ なお、本件はLN社とCCA社間での統合であり、KH社の他事業会社は含まれない。1豪ドル=61円(2008年11月13日現在)

買収対価としてCCA株主は、現金、ライオンネイサン株、もしくは両方の組み合わせのいずれかを選択できるという方式はとても良いと思います。

M&Aでは、必ずしも株主の望む通りの結果にならない可能性があることが、「TOBによる敵対的買収の不可能性」として1980年にサンフォード・グロスマンとオリバー・ハートにより指摘されています。
この理論によると、多くの株主が次のように考えます。

「買収者は被買収企業の将来性について自分たちの知らない良い情報を持っているに違いない。買収者がマジョリティを握ることで株価は買収価格より上がるはず。ならばそのまま持っていよう。」

多くの個人株主がこのように考えるなら、このM&Aは不成立に終わります。

被買収者の株主が対価を株で受け取るか、現金で受け取るか選択できれば、「TOBによる敵対的買収の不可能性」の問題は解消されます。

ただし、国内法ではこのようなスキームが予定されておらず、実行は困難であると思われます。

【リンク】

2008年11月17日「ライオンネイサン社とコカコーラ アマティル社における全株式取得に向けた交渉について」キリンホールディングス
http://www.kirinholdings.co.jp/news/2008/1117_01.html