為替マネジメントの方向性

中小企業の高成長実現に

8日の外国為替市場は円相場が一時、1ドル=98円台まで急騰した。金融危機をきっかけにドルは中長期的な先安観が強まり、しかも為替市場の予想変動率は歴史的高水準に達している。海外展開を加速する日本企業にとって、為替マネジメントは試練の時を迎えた。
(日本経済新聞 2008年10月9日 17面)

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8日、円・ドル相場の先行き1ヶ月の見通しを示す予想変動率(ボラティリティ)は、前日比2.1ポイント増の24.9%と1998年10月20日に25%を付けて以来の高水準となりました。

また円相場は大幅続伸し、一時1ドル=99円61銭まで円高・ドル安が進みました。

そんな中、多くのCFOは為替マネジメントに苦慮していることと思います。
今日の日経新聞17面の特集記事、「グローバル財務の潮流」の中でいくつかの企業の為替マネジメントの事例が掲載されています。


商船三井
「1ドル=60円なら2500億円の損失ー。同社はこんな想定の下、いざという時でも十分な資本と投資を確保できるよう、自己資本1兆円構想(前期末は6800億円)を掲げ資本の積み増しに励む。90年代に比べ円高への耐久力は高まっており、現時点で極端な円高を予想しているわけではない。それでも有事に備え、踏み込んだ議論を続けている。」

エイチ・アイ・エス
「2008年10月期から、新規の長期為替予約(ドル買い)を中止した。海外旅行先のホテルなどの仕入れ代金を固定するため、前期までは1ドル=110円程度の水準で2-3年先まで為替予約をしていた。しかし為替相場が激しくなり、思わぬ損失を被る可能性が出てきたためだ。」

三菱電機
「エアコンなど欧州圏での事業が拡大するなか、ドル建て取引のユーロ建てへの変更を進めている。昨年後半からの米国金利の低下で、世界的にドル安が進むと予測したからだ。取引先によってはドル建てを希望するケースもあり、個別に交渉してユーロ建てに順次切り替えている。」

ユニデン
「ドルに偏る保有資産の分散を検討中。約300億円のドル預金を、円建ての預金や有価証券などに配分し直す方針だ。」

コメリ
「同社は売上高の約15%が輸入品で原則ドルでの決済。現時点ではドル建ての決済方針を変えていないが、円に変えた方が利点が多いとなれば、変更も選択肢の一つだ。」

一番難しいのは、ドルが駄目ならユーロに行けば良いというものではない点です。岩井克人教授は、「資本主義から市民主義へ」の中で、次のように言っています。

―ドルが揺らぐと、これはほんとうに世界危機になる。そのなかで日本がどうなるか。

岩井心中でしょう。ユーロのほうは大丈夫だと思っているだろうけれど、ユーロがもっているユーロダラーというのは膨大です。ドル危機が本格化したら、ユーロだって危機に陥る。ユーロはある程度は穏便にいくように振る舞うしかない。

それでもドルのリスクをとるよりはマシだとは思いますが。

【リンク】

資本主義から市民主義へ
岩井 克人

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