ゴーイングコンサーンの開示基準変更へ 2009年3月期から適用か?

経営リスク開示、国際会計基準並みに 金融庁審議会

金融庁の企業会計審議会は24日、企業の経営リスクの開示方法に関する会計ルールを変更する方針を決めた。09年3月期決算から適用できるように、4月にも金融商品取引法の内閣府令や、監査基準を改正する方針。
asahi.com 2009年3月25日0時23分

【CFOならこう読む】

現在の日本の会計基準では、継続企業(ゴーイングコンサーン)の前提に重要な疑義を抱かせる事象、または状況があれば、「継続企業の前提に関する注記」を記載する必要があります。

継続企業の前提に関する注記
財務諸表等規則第八条の二十七
貸借対照表日において、債務超過等財務指標の悪化の傾向、重要な債務の不履行等財政破綻の可能性その他会社が将来にわたって事業を継続するとの前提(以下「継続企業の前提」という。)に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在する場合には、次の各号に掲げる事項を注記しなければならない。

一 当該事象又は状況が存在する旨及びその内容
二 継続企業の前提に関する重要な疑義の存在
三 当該事象又は状況を解消又は大幅に改善するための経営者の対応及び経営計画
四 当該重要な疑義の影響を財務諸表に反映しているか否か

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そして、監査人が「経営者の対応・経営計画」の合理 性を判断 し、疑義を解消させるような合理的な経営計画等が無い場合、意見不表明 もあり得るというような建て付けになっています。

昨今の経済情勢下において、監査人が、経営計画に合理性がないことを理由に、監査意見不表明としたため、倒産に至ってしまうという事例が散見されており、これを問題視した金融庁の企業会計審議会が会計基準の改正を検討しているのです。

改正は、IFRSと同一の会計基準になる形で行われるようです。

IFRSでは、上記事象又は状況の存在がある場 合には、経営者の対応策を検討し た上で、なお、継続企業の前提に“重要な不確実性”がある場合に 重要な不確実性がある旨の注記 を記載

つまり合理的な経営計画があればそもそも注記は不要となるのです(ただしその場合にも有価証券報告書の「事業等のリスク」や「財政状態・経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(いずれも非監査)において開示が必要となります)。

この改正に合わせて監査手続の変更も予定されており、経営者の評価及び対応策を提示しない場合を除き、監査意見不表明という選択はできない、ということになりそうです。

なお、この改正は2009年3月期からの適用が予定されており、実務への影響は重大であると思います。

【リンク】

「企業会計審議会第19回監査部会議事次第」金融庁

「資料3-1 継続企業の前提に関する注記に係る我が国と欧米の比較」[PDF]

「資料3-2 財務諸表などの用語、様式および作成方法に関する規則」[PDF]

「資料3-3 ISA(国際会計基準)抜粋」[PDF]

「資料3-4 「継続企業の前提」に関する注記の判断」[PDF]