テクモ・スクエニのケース

テクモとコーエー、経営統合波乱含み 具体策は11月上旬メド

ゲームソフト会社でともに東証1部上場のテクモとコーエーは4日、経営統合に向け協議を始めると発表した。経営統合委員会を設け、11月上旬をメドに統合の具体策を詰める。テクモは同業のスクウェア・エニックスからTOB(株式公開買い付け)提案を受けていたが、経営陣はこれを拒否し、コーエーとの統合を選んだ。これを受け、スク・エニはテクモに質問状を提出、対応を今後考えるとしており、先行きはなお波乱含みだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080905AT1D040AF04092008.html

【CFOならこう読む】

スク・エニからのTOB提案を拒否し、ホワイトナイト役をコーエーに求めた格好です。

スク・エニではなく、コーエーを選んだ理由をテクモ経営陣は明確に語っていません。
スク・エニは昨日、テクモに対し質問状を提出し、この点を照会しています。

今後の展開が注目されますが、仮にスク・エニが敵対的TOBに打って出た場合、テクモがコーエーとの経営統合を強行するのは、時間的な制約から、非常に困難であると言えます。その理由は次の通りです。

「簡易合併手続が利用できる場合を除き、会社が第三者と合併を行うには株主総会において特別決議を行う必要があるが、敵対的買収の手段として一般に用いられるTOBは、証取法上、買付期間が最短で20日、最高で60日とされており、これとの関係で、実際に防衛的な合併を行うには実務上困難な問題が生じる可能性がある。
まず、そもそも合併が敵対的TOB阻止のための手段として機能するためには、TOB手続中に対象会社の取締役会において他の会社との合併を決定し、TOB買付期間満了前の一定の日を基準日ないし株主名簿閉鎖日として、合併承認のための株主総会を招集しなければならない。
TOB完了後に基準日を定めて株主総会を招集しても、買付者側が多数の株式を取得して基準日までに名義書換をすれば合併承認決議はブロックされてしまうことになるからである。しかしながら、基準日等を定めるためには2週間前の公告が必要とされていることに鑑みると、最短20日間の買付期間内にここまですべて完了させるのは不可能ではないにせよ至難の業であろう。」
(「平時」の予防策と「有事」の対応策 太田洋・原田充浩著 商事法務)

いずれにしても、スク・エニとコーエーのいずれがテクモの株主価値を創造するのか(当然、従業員のモチベーションを高める施策も含まれます)、きちんと時間をかけて説明をした上で、テクモ株主がいずれかを選択する、という手続きが必要でしょう。そういう意味では、両社がTOB合戦を行うのが一番わかりやすい形であると私は思います。

【リンク】

2008年8月29日「テクモ株式会社に対する同社株式の友好的公開買付けについて」株式会社スクウェア・エニックス [PDF]

2008年9月4日「テクモ株式会社に対する同社株式の友好的公開買付けの提案に関する同社からの回答への対応」株式会社スクウェア・エニックス [PDF]

平成20年9月4日「経営統合にかかる協議開始のお知らせ」テクモ株式会社 株式会社コーエー [PDF]