自社株買いによる株高効果

実施率上昇、株高効果ます 金庫株、新たな説明責任を

株式相場の数少ない好材料として自社株買いが脚光を浴びている。中でも投資情報として関心が高いのが「自社株取得枠」だ。会社が自ら設定した取得枠のうち、どの程度を実行したかを表す実施率が年々上昇。開示情報としての信頼度向上とともに、株価への影響も大きくなっている。
(日本経済新聞2008年9月4日 12面 自社株買いの今 上)

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記事では、自社株買いと株高効果との関連について次のように説明しています。

「野村證券金融経済研究所が取得枠設定を発表した企業の株価をTOPIX対比で調べたところ、2007年度上期までの株高効果は発表日からせいぜい2営業日、株価上昇率も1-2%だった。ところが2007年度下期以降は株高効果が20日程度持続しているうえ、上昇率も4%上回る。」

理論的には自社株買いは株主価値に中立です。しかし「低迷する株価に刺激を与えたい」という動機で自社株買いを行う会社は少なくありません。株価に影響を与えるとしたらそれはどのよう理由によるのでしょうか?

第一に、経営者が、株価が企業のファンダメンタルズ価値を下回っていることを確信していて、それを市場にアピールすることにより株価に影響を与えることがあります。これはシグナリング効果と呼ばれます。

第二に、企業にキャッシュフローが潤沢で、当面資本コストを上回るような投資案件もないことから、株価にこれが織り込まれていないときに、これを自社株買いまたは増配により株主に還元することにより株価に反映させることができる場合があります。

第三に、社債等負債により資金調達し、同時に自己株買いを実行し、負債比率を上昇させることにより資本コストを引き下げることができるなら、株主価値は上昇します。

2007年度下半期からサブプライムの影響もあり、株価は大きく下げています。したがって、ファンダメンタルズに比し株価が低い会社が相対的に増加していると考えられます。

また、キャッシュの効率的利用が求められるようになったのも最近のことです。更に、昨日もお話ししたように、バブル崩壊後借金返済に汲々としてきた日本企業は、ここにきてようやく過剰債務が解消され、資本コストを引き下げるために負債比率を上昇させる財務政策を選択し得る状況になりつつあります。

つまり上で説明した3つの要因が複合的に作用して、自社株買いが株価上昇を促す能性があるのです。
そういう意味で、今は自社株買いの好機であると言えそうです。

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