本日の日経経済教室 「財政政策に過大な期待抱くな」谷内満早稲田大学教授

世界金融危機は各国経済を深刻な不況に陥れ、各国政府は不況克服のため積極的な財政政策に取り組んでいる。金融政策面で一段の緩和余地はなくなってきており、財政政策が頼みの綱になっている。減税をしても、消費心理が萎縮する現状では消費は増えないと考えら、政府支出の大幅拡大への期待が高い。
今回のような深刻な金融危機が起きた場合、金融システム崩壊を防ぐため、金融機関への大胆な政府介入が必要である。だが残念ながらいったん不況になると、経済を短期的に浮揚させようとしても政府にできることは限られる。
戦前の大恐慌では、ニューディール政策の積極財政が有効だったという考え方が浸透している。だが現実には、当時の財政出動の規模は小さく、政府支出の増加はGDP比2-3%程度にすぎなかった。また早稲田大学の若田部昌澄教授によれば、英国はほとんど財政出動なしに大恐慌を脱出した(本欄昨年11月3日)。他方、日本では1990年代の塁次の景気対策で、政府支出はGDP比7%以上も拡大したが、効果はなく、経済は長期低迷した。

(日本経済新聞2009年3月27日 27面 経済教室)

【CFOならこう読む】

積極財政の効果を懐疑的にみる経済学者が数多くいることが本欄で紹介されています。

それもバロー、ルーカス、サージェント、ブキャナン、ベッカー、プレスコット、マンキュー、テーラーといった蒼々たる顔ぶれです(一方、財政刺激策に賛成なのは、サマーズ、ステグリッツ、アロー、フェルドシュタイン)。

谷内教授の実証分析でも、「公共投資拡大の効果はないか、あったとしても非常に小さい」という結果が出ているそうです。

「財政出動に効果があまりないとしたら、政府は何をすべきなのか」
「日本の法人所得課税は先進国でいちばん高い。法人税率を引き下げ、民間企業の活力を高めることが重要である。今回の不況で赤字転落の企業が多いので、法人税を減税しても意味がないと考える人がいるかもしれない。だが報道などで紹介されているように、この不況下でも利益をあげている元気な企業はある。また、企業業績が好不況にあまり左右されない業種も多いので、不況の今でも法人税減税は、経済活性化に役に立つ」
(本稿より抜粋)

さらに言うなら、法人税減税が呼び水となって多くの外国企業が日本を拠点にしてもらえれば良いと私は思います。

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