景気対策は必要か?

基礎収支の黒字化目標 先送りも選択肢 自民幹事長表明 政府と協議へ

自民党の麻生太郎幹事長は5日、日本経済新聞などとのインタビューで、2011年度に国・地方の基礎的財政収支を黒字化する目標を先送りする可能性について「選択肢の一つとしてよく協議しないといけない」と述べ、政府・与党内で協議していく考えを明らかにした。政府は財政健全化の観点から先送り慎重だが、与党内には麻生氏に同調する声もある。
(日本経済新聞 2008年8月6日 1面)

【CFOならこう読む】

麻生氏の発言要旨は次の通りです。


【経済対策】
財政再建をやりながら何とかするとなると、かなり手足が縛られる。景気対策が優先されてしかるべきだ。一国財政再建主義や財政再建原理主義になれば経済は活力を失う。パイを大きくして財政再建していくのが当たり前だ。
財政再建をやるための増税はしにくい。景気を刺激する手口はいくつも方法はある。企業がいま設備投資するのだったら設備投資減税とか住宅着工もいろいろ考えられる。貯蓄から投資にお金が回るように考える。膨大な予算を使ってばらまくのとは違う。

【基礎的収支の黒字化目標】
今の経済情勢は前より難しくなっている。プライマリーバランスを優先させるために景気がさらに悪くなるのは取るべき選択ではない。(2011年度にプライマリーバランスを黒字化する目標の先送りは)選択肢の一つとしてよく協議しなければいけない。

【小泉政権時代の新規国債発行30兆円枠】
全然こだわらない。景気は気分が大きい。景気対策を考えるときにはきちんとしたものをやるという姿勢が大切だ。
(日本経済新聞 2008年8月6日 2面)

これに対し、今日の日経新聞大機小機が言うように、

「こうして考えると現状程度の景気の悪化にあえて景気対策を取る必要はない。」

との見解も有力です。

重要なのは正しい現状認識とそれに対し適切な処置を講ずることです。
この点、設備投資の伸びが大きく減少していることを鑑みると、(http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080805AT1C0500E05082008.html)、リチャード・クー氏の「日本経済を襲う二つの波」の次の主張が的を得ているように私は思います。

「今のように企業の過剰債務が解消されたにもかかわらず、彼らが借金拒絶症でお金を借りようとしない局面では、政府としてはなんとかして彼らにお金を借りてもらわなければならない。民間がお金を借りて使うようになるまで、政府はずっと財政赤字を出し続けなければならないからだ。言い換えれば、いま必要な政策は、企業がお金を借りたくなるような環境づくりに資する政策である。
(中略)
したがって今はすべての焦点をそこに当てるべきである。例えば設備投資の償却期間をこれから5年間に限って大幅に短縮するといった政策を打つべきである。当初設定されている期間の半分の期間ですべて償却してもいいということになれば、企業はお金を借りてでも直ちに設備投資をしようとするはずである、その方がずっと得だからだ。」

近い将来大きな設備投資減税がある可能性が高いなら、CFOとしては、現在計画している大規模投資は先送りせざるを得ないですね。

【リンク】

日本経済を襲う二つの波―サブプライム危機とグローバリゼーションの行方
リチャード・クー

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