すかいらーくのMBO

すかいらーく業績不振、創業家社長に退任要求 野村系投資会社

外食大手すかいらーくの主要株主である野村グループなどの投資会社2社が、創業一族の横川竟社長に退任を要求したことが29日明らかになった。国内最大規模のMBO(経営陣が参加する買収)で再上場を目指しているが、ガソリン高に伴う外食不振で業績が改善せず、両社が不満を強めた。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080730AT2C2901P29072008.html

【CFOならこう読む】
MBOとは、多くの場合”経営者による買収”と説明されます。
例えば、あずさ監査法人のウェブサイトではMBOを次のように定義しています。

「企業の子会社や事業部門の経営者、従業員がベンチャーキャピタルや金融機関から資金を調達し、その子会社の株式を買い取ったり、新会社を設立し営業を譲り受けることで独立するという形態のM&Aのことを指します。現代版『暖簾分け』とも言われます。」

しかしMBOもM&Aの1つの手法である以上、当然に支配権の移動を伴います。支配権は経営者に移動するのでしょうか? そうではありません。支配権は資金の大部分を提供するバイアウトファンドに移動するのです。MBOとは、経営者による買収ではなく、経営者もごく一部の持分を取得する形で行われる買収形態なのです。


(2008年7月30日日経新聞より)

この点、服部暢達氏は著書「M&A最強の選択」で次のように説明しています。

「実はMBOというのは、買収ファンドが相対的に小額の自己資金を株式に投資して、残りの(大半の)買収資金をノンリコース・ローンで調達するLBOの一形態なのだ。買収ファンドが上場企業を無理やりLBOで買収するというとマネーゲームのイメージが強く社会的に批判を浴びかねない場合に、買収ファンドが経営陣に参加をよびかけるのだ」

だから買い手であるファンドは、実績を出せない経営者をクビにせざるを得ません。問題は、経営者自身がこういったMBOの本質を理解しているかどうかです。経営者が、MBOを”経営者による買収”と誤解しているなら、買い手である自分がクビになることを受け容れられないでしょう。

野村ホールディングスは、すかいらーくへのTOB開始を知らせるプレスリリースのサブタイトルを” すかいらーく経営陣によるマネジメント・バイアウトについて”としています。私はこの表現に少なからずいかがわしさを感じます。

【リンク】

平成18年6月8日「すかいらーく株式の公開買付け開始に関するお知らせ」野村ホールディングス株式会社 野村プリンシパル・ファイナンス株式会社
http://www.nomuraholdings.com/jp/news/nr/holdings/20060608/20060608_c.html