社外取締役-昨日の続き

【CFOならこう読む】

ヴァージングループ会長リチャード・ブランソンの「僕たちに不可能はない」(中村紀子訳 インデックス・コミュニケーションズ)を読みました。

ヴァージンは1986年に株式を上場したのですが、すぐに非公開化してしまいました。その理由をリチャード・ブランソンは本の中でこう語っています。

「だが、シティのやり方に愛想が尽きるまで、そんなに時間はかからなかった。シティと僕とは結局相容れないのだ。公開したあとは、どのバンドと契約を交わすか話し合うために、それまでのように自宅兼仕事場の船でパートナーたちとリラックスしたミーティングを持つ代わりに、取締役会のご意見を頂戴しなければならなくなった。彼らのほとんどは、音楽ビジネスとは何かをてんで分かっていなかった。一夜にして何百万枚ものセールスを叩き出すレコードの作り方など、知るはずもなかったのだ。おまけに、ライバル会社を出し抜いて人気バンドと契約を交わさないといけないというのに、取締約会が開かれるまで何週間も待たなければならなくなった。いざ取締約会が開かれたときには、時すでに遅し、の状態だ。さもなくば、取締役会の連中がこんなことをほざく。「ローリング・ストーンズと契約するですって? うちの家内が嫌ってるんですよねぇ。ジャネット・ジャクソン? 誰ですかそれ?
僕はそれまで、素早く決断を下し、直感に従って行動してきた。ところが今は「赤テープ」と取締約会にぐるぐる巻きにされ、規則規則の毎日だ。それに、ぴかぴかの大型テーブルの上座に捉えられ、周りをピンストライプの背広に囲まれながら、「ヴァージンとは何か」を説明しなければならないのには反吐が出そうだ。そもそも今までの僕には執務室のようなものがなくて、僕の「机」は船の居間にある座り心地満天の肘掛け椅子、黄色のメモ帳に必要なことを書き込んでいればそれで良かった。だから何より、自分の足で立っている気持ちがしない。利益を倍にしているのに、なぜかヴァージンの株は下降していく。そして、僕は人生で初めて、欝に陥った。」

私はリチャード・ブランソンに何を言うべきでしょう。少なくとも、昨日お話ししたようなことを、したり顔で語ることはできません。リチャード・ブランソンが言っていることは100%正しい。

会社には、”株式公開すべき会社”と”株式公開すべきでない会社”があるのです。ヴァージンは”株式公開すべきでない会社”、そして日本の上場企業の多くも”株式公開すべきでない会社”。

そういう会社は、リチャード・ブランソンのように、直ちに非公開化すべきだと私は思います。

【リンク】

僕たちに不可能はない
中村 起子

僕たちに不可能はない
インデックス・コミュニケーションズ 2008-07-22
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