給与所得控除、高額報酬役員は圧縮

政府税制調査会は9日、サラリーマンの給与所得控除の対象を年収1500万円部分までとし、それを超える部分は対象外とする方針を固めた。23歳~69歳の家族を扶養する納税者に適用する成年扶養控除も原則として、平均的な年収に近い年収568万円超の場合は廃止する。いずれも2011年度税制改正大綱に盛り込む。高所得者により多くの負担を求め、財源を捻出する姿勢が強まる。
(日本経済新聞2010年12月10日1面)

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「現行の給与所得控除の仕組みは、年収が増えるに従って控除額が膨らむ。見直しでは年収が1500万円を超すと年収が増えても、控除額が245万円で頭打ちになるようにする。
(中略)
さらに年収2000万円以上の報酬を得ている取締役や監査役、執行役などの法人役員は控除額を一般社員の半分程度に圧縮する」
(前掲紙)

これにより高額報酬役員の所得税の増税額(子どもなし、専業主婦世帯の場合)は次のように試算されています。

年  収 一般社員or役員 所得税の増税額
2000万円 一般社員 約8万円
役   員 約8万円
2500万円 一般社員 約20万円
役   員 約45万円
4000万円 一般社員 約50万円
役   員 約100万円

(前掲紙)

今日の記事には、”高所得者、反発必至”との見出しが踊っています。しかし日本には高所得者の声を届ける政党がありません。この点、中間選挙で共和党が勝ち、オバマ政権の富裕層のみブッシュ減税を打ち切るという方策が不可能になった米国と大きく異なります。

高所得者というと大企業の役員をイメージしがちですが、むしろこの増税の対象の中心はベンチャー企業等のオーナー経営者でしょう。

彼らは反発の声をあげるでしょうか。私はそうは思いません。ただ静かに日本を去るだけです。

雇用の受け皿という意味でも最も重要なスモールビジネスの担い手の起業意欲をそぐような税制が、財源の帳尻合わせのために、大した議論もないまま法制化されてしまう国家に未来はありません。

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