社外取締役

「仲間内」に投資家厳しく 中立・独立性を疑問視

社外役員の存在意義が問われている。社外から中立な人材を招いて取締役会に外部の声を取り込み、企業価値の向上やコーポレートガバナンスの改善に資するのが本来の機能だ。しかし現実は中立性や独立性に乏しい名ばかりの「社外役員」が多い。形式上の要件を満たしていても期待される役割を果たしているか疑問視する向きもある。
(日本経済新聞 2008年7月24日 16面 社外役員を問う -上-)

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会社法では、社外取締役を次のように定義しています。

「社外取締役とは、「株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがない者をいう」(会社法2条15項)

「監査役設置会社」では社外取締役の設置義務はありませんが、「委員会設置会社」では指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3つの委員会は、その過半数が社外取締役により構成されなければなりません。

会社法では、親会社関係者・重要な取引先の関係者等であっても社外取締役の要件を満たすので、その独立性に疑義があると指摘されています。

「社外取締役に実質的に求められる資質は、執行役からの「独立性」であるが、その適格性は疑わしい。執行役に支配されていなくても、執行役と利害を共通にする点が多い」(江頭憲治朗「株式会社法」有斐閣496頁)

今年5月に、カルパースなど欧米の有力な年金基金や運用会社7社が、「日本コーポレートガバナンス白書」という提言を公表しています(https://cfonews.exblog.jp/7947236/)。

記事にもあるように、白書は、「独立した立場で経営陣を監督する社外取締役を最低3人指名(中期的には社外取締役が取締役会の3分の1、長期的には2分の1を占めるのが望ましい)」と提言しています。そして社外取締役の適格性を担保するため、「合理的で透明なプロセスを経て、適切な能力を備えた社外取締役を指名し、その独立性と適合性を企業開示文書で株主に伝える」というような手続を要求しています。

社外取締役の要件については、次のように国内でも様々な提言がされています。

「社外取締役は、会社法上の社外取締役の要件を充足するだけでなく、その役割に相応しい実質的な独立性を具有することが求められる。したがって、親会社や主要な取引先等の取締役または使用人が子会社、特に上場会社の社外取締役を兼務すること、取締役の相互派遣等はこれを避けるものとし、社外取締役の就任期間は原則として5年を超えない」(新コーポレート・ガバナンス原則」

「実質的独立性に疑義がある者①大株主又はその利益を代表する者、②経営者又は従業員である(あった)者、③グループ会社の経営者又は従業員である(あった)者、④重要な取引関係がある(近い過去にあった)別の会社の経営者又は従業員である者、⑤当該会社のアドバイザーとして、取締役としての報酬以外に高額の報酬を受け取っている(近い過去に受け取っていた)者、⑥上記のいずれかに該当する近親の親族を有する者、⑦会社間における取締役の相互兼任がある場合の取締役である者、⑧当該会社の取締役に就任してから、すでに長期間が経過している者」(日本取締役協会「独立取締役コード(2005年10月13日

これらによれば、社外取締役として顧問弁護士を選任することも(学研のケース)、上場子会社の社外取締役を親会社の使用人が勤めることも(富士通・ニフティのケース)も容認されないということになります。

【リンク】

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