自己株消却-東洋埠頭のケース

洋埠頭自己株消却へ

東洋埠頭は、2009年3月期中にも、保有する自社株を消却する公算が大きい。5月末時点で発行済み株式数の約6%にあたる532万5千株強を金庫株として保有しており、この全株を消却するようだ。金庫株の簿価は11億円強。保有株が将来市場へ放出されて1株当り利益が希薄化する懸念を払拭する狙いだ。
同社は5月13日に資本準備金のうち20億円を「その他資本剰余金」に振り替えると発表。その他資本剰余金にすれば、取締役会の決議だけで消却できる。

(日本経済新聞2008年7月2日 16面)

【CFOならこう読む】

会社法では、自己株式を消却するには、消却する自己株式の種類・数を取締約会設置会社においては取締約会決議を要する旨定めています(会社法178条2項)。

会計処理としては、消却手続完了時に当該自己株式の帳簿価額をその他資本剰余金から減額し、その他資本剰余金の額がマイナスになる場合には、期末に当該マイナス額をその他利益剰余金から減額されます(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準11項、12項)。

一方自己株式を処分する場合には、法がとくに別の処分方法を認める場合を除き、株式の発行と同じ募集の手続をなすことを要します(「株式会社法 第2版」江頭憲治郎 有斐閣)。

金庫株は金庫に入っていて、いつでも好きなときに取り出せる、というようなものではないのです。金庫株を保有していることと将来的にエクィティファイナンスを実行することは全く無関連であるのです。EPSの希薄化懸念といった根拠の無い市場の声にCFOは耳を貸す必要はない、と私は思います。

【リンク】

平成20年5月13日「資本準備金の額の減少に関するお知らせ」東洋埠頭株式会社
http://www.toyofuto.co.jp/pdf/other/200805shihon.pdf