HOYA・ペンタックス、のれん代180億円少なく資産の評価方法変わる

HOYAが3月、ペンタックスを吸収合併したことに伴って発生するのれん代が、当初見込みの総額500億円から317億円にとどまり、180億円強少なくて済むことが分かった。経営統合の方式を完全子会社化にとどめず、合併にまで踏み込んだことで、税金に関連した会計処理が変わった。のれん代は10年で均等償却する方針だ。毎年の償却額が減る。
(日本経済新聞 2008年6月18日 17面)

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記事によると、

「時価純資産が増える「原資」となったのは買収される前のペンタックスが、保有する特許権の転売可能性を踏まえて計上していた税金関連の負債など。買収時の再評価によりこれに180億円の資産価値が生じた」

とのことです。

はっきりと原資を特定できないのですが、繰延税金資産・負債への取得原価の配分額の見直しがあったものと思われます。
「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第10号)第73項は、繰延税金資産・負債への取得原価の配分額の見直しについて次のように規定しています。

「企業結合日に認識された繰延税金資産及び繰延税金負債への取得原価の配分額の見直しは、以下の場合がある。
(1) 暫定的な会計処理の対象としていた識別可能資産及び負債への取得原価への配分額の見直しに伴うもの
(2) 将来年度の課税所得の見積りの変更等による繰延税金資産の回収見込額の修正によるもの

(1)については第70項に従い会計処理する。
(2)の繰延税金資産の回収見込額の修正のうち、企業結合年度における修正は、第70項に従い、企業結合日におけるのれんの額を修正し、企業結合年度の翌年度における修正は、第70項の定めにかかわらず、原則として、翌年度の損益(法人税等調整額)に計上する。ただし、企業結合年度の翌年度における修正であっても、その修正内容が、明らかに企業結合年度における繰延税金資産の回収見込額の修正と考えられるとき(企業結合日以後1年以内に行われたものに限る。)は、企業結合日におけるのれん(又は負ののれん)の額を修正する(第379項参照)。」

記事の「180億円まとめて利益に計上し、のれん代はそのままとする会計処理も可能だったが、合併で可能になったのれん代の圧縮を選択した。」は、第73項の(2)における企業結合年度の翌年度における修正を参照しているものと思われます。

【リンク】

平成20年5月16日「(訂正)平成20 年3 月期第4 四半期(3 ヶ月間)連結決算概況<ご参考>の訂正について」HOYA株式会社
http://www.hoya.co.jp/data/current/newsobj-605-pdf.pdf