仕掛中の研究開発費一括費用処理 武田薬品減益に

大型買収で償却費増、2期連続の営業減益=武田薬品の09年3月期連結業績

武田薬品工業=2009年3月期連結業績予想は、売上高が14.2%増の1兆5700億円、営業利益が43.3%減の2400億円、経常利益が51.5%減の2600億円、最終利益が55.0%減の1600億円。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200805/2008050900631&rel=j&g=eco

【CFOならこう読む】

武田薬品の平成20年3月期及び平成21年3月期(予想)の連結業績は次の通りです。

平成21年連結業績予想が下方修正された主な要因は、買収したミレニアムやTAPの開発中の新薬候補の価値について、「仕掛中の研究開発費」として一括費用計上されるためです。

米国及びIFRSでは、仕掛中の研究開発費が無形資産として計上され、減損テストの対象となります。研究開発プロジェクト完了時に取得企業は個別に耐用年数を決定し償却を開始します。研究開発費が資産計上されなければ、日本基準ではのれんに含めて最長20年で償却されるのですが、米国で資産計上されているなら、「実務対応報告18号 連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」により、研究開発費は日本基準への修正、すなわち一括費用処理が求められます。

しかし少なくともM&Aの場面では、買収価格の大きな部分を開発中の新薬候補の価値が占めるにも関らず、これに資産性を認めず一括費用処理を強制する日本基準は妥当とは言えません。2011年までに予定される日本基準のIFRSへの統一の中で改正されるものと思いますが、それだけ武田薬品の減益を額面通り受け取るべきではないでしょう。

余談ですが、この影響により従来30%~40%であった武田薬品の配当性向が平成21年3月期には88.5%に跳ね上がるという予想が発表されています。
武田薬品は配当政策を次のように公表しています。

「配当につきましては、長期的な視点に立ち、連結業績に応じた安定的な利益の配分を基本方針とするとともに、「06-10中期計画」最終年度の連結配当性向を「45%程度」とすることを目標に、段階的に引き上げてまいります。」

この方針をどのように変更するのか注目されます。

【リンク】

2008年05月09日「当社子会社による米国バイオ医薬品会社・Millennium Pharmaceuticals, Inc.株式公開買付けの結果について」武田薬品工業株式会社
http://www.takeda.co.jp/press/article_27166.html