第三者割当増資に規制論

株主保護 問われる実効性 東証・監査役協会など検討

特定の企業や投資ファンドに株式を割り当てて資金調達する第三者割当増資に厳しい目が向けられている。一株利益が減るため株価下落につながりかねず、既存株主に不利としてかねて問題視されてきた。ところが実施企業が急増しており東京証券取引所、日本監査役協会などが規制の検討を始めた。株主保護に向けた実効性の高い規制を打ち出せるか、注目される。
(日本経済新聞 2008年4月28日 16面 法務インサイド)

【CFOならこう読む】

2006年夏に、王子製紙が北越製紙に対し敵対的TOBを仕掛けた際に、三菱商事が北越の第三者割当増資を引き受け、24%強を出資する筆頭株主になることにより、敵対的TOBが阻止された事件を皆さんご記憶だと思います。日本では授権株数の範囲内であれば、第三者割当増資は取締役会の決議で行うことができます。したがって、第三者割当増資を買収防衛策として利用することが取締役会決議のみでできるのです。上記記事にもあるように、第三者割当増資の違法性が問われる場合もあります。

「一つは株主総会の特別決議を経ずに株式を市場価格より特に有利な価格で第三者に割り当てる「有利発行」。もう一つは発行の主要目的が資金調達でなく、企業の支配権の維持や移動を目的とした「不公正発行」の場合だ。いずれも会社法で禁止されている。」

つまり資金の使い道が決まっていて割当価格が大幅に安くないケースでは第三者割当増資が認められるのです。北越の事例でも、第三者割当増資は設備投資のために行われることが発表されていました。これを規制するために「東証の自主ルールで規制する」すなわちニューヨーク証券取引所のように20%を超える株式を発行する場合、株主総会決議にかけるようにするというのは、一つの方法であると思います。しかしこれだけでは、ブルドック事件以降加速している、株式持合いを含めた安定株主作りの流れを一層強めることになりかねません。

上場会社の増資は原則公募増資とすべきです。取引所は第三者割当増資を例外的なものととらえ、一定規模以上のものは個別に審査をするという位の規制をしないと日本では機能しないと私は思います。

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