西武鉄道株虚偽記載による損害賠償問題-地裁判決

西武鉄道株虚偽記載、一部個人株主へ賠償命令・信託は請求棄却

西武鉄道の有価証券報告書の虚偽記載発覚による株価下落で損失を被ったとして、個人株主約290人が西武鉄道側に総額約13億円の損害賠償を求めていた訴訟の判決で、東京地裁(難波孝一裁判長)は24日、176人、約2億3000万円分の支払いを西武鉄道側に命じた。一方、信託銀行4社が計約120億円の損害賠償を求めた訴訟では、信託銀行側の請求を棄却した。

http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080424AT3Y2400624042008.html

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今回の判決は、虚偽記載公表後に株を売却した176人について、虚偽記載公表日の終値(1081円)と売却価格との差額分の損失を被ったと認定する一方、計2億3千万円の賠償を命じたものです。現在も保有している株主は、1株当たり評価額が1081円下回っていないと損害を認めませんでした。2004年12月の証取法(現金商法)改正で虚偽記載による株価下落で損害を被った株主を救済しやすくする規定が盛り込まれました、西武鉄道のケースは改正前のため適用されません。

金商法21条の2第2項は損害の額を次のように計算すると定めています。すなわち、有価証券報告書等の虚偽記載等の事実が公表されたときは、その公表日前1年以内に当該有価証券と取得し、その公表日において引き続きその有価証券を所有する者は、その公表日前1ヶ月間のその有価証券の市場価額(市場価額がないときは、処分推定価額)の平均額から公表日後1ヶ月間のその有価証券の市場価額の平均額を控除した額を、虚偽記載等により生じた損害額とすることができる、としています。

今回の地裁判決の算定方法はこれとは異なるものになっています。

なお、金商法の損害賠償請求権者は、上の規定からも分かるように、公表日前1年以内に株式を取得し、その公表日において引き続き保有する者に限られます。市場価額を引き下げるような虚偽記載等(例えば虚偽の損失計上)によって売却して損害を被った者は、保護されません。この点立法論としては学説に批判があります(証券取引法読本 河本一郎・大武泰南著 有斐格)。

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