確定拠出年金の税効果

確定拠出年金制度充実へ 諮問会議、株式市場活性化をめざす

政府の経済財政諮問会議は1日の会合で、株式市場の活性化に取り組む方針を確認した。日本は他の先進国と比べて個人による株式への投資が少ないため、税制優遇される確定拠出年金(日本版401k)の拡充を目指す。検討課題の多くは昨年まとめた成長戦略にも盛り込まれ、実現には課題が多いのも実情だ。
議論の土台となる民間議員の提言は、確定拠出年金の規模拡大が柱。「企業型」は企業が拠出し、従業員が株式など運用先を決める。低減は掛け金を増やすため、企業が拠出する掛け金に従業員が上乗せして資金を出す「マッチング拠出」の解禁を求めた。
自営業者などに限っている「個人型」については、専業主婦や公務員などに加入資格を拡大。さらに60歳から年金をもらうために必要な10年の加入期間を撤廃か短縮するよう要望した。株式は短期的にはリスクが大きいが、長期の資産形成を目指す確定拠出年金が広がれば、家計が保有する約1500兆円の金融資産が株式投資に向かうと期待している。

(2008年4月2日 日本経済新聞 5面)

【CFOならこう読む】


日本の株式市場を効率的なものにするためには、個人株主の増大が必要です。そのための施策として確定拠出年金の拡充が有効であると考えます。個人の資産形成の上でも確定拠出年金は他のどの投資と比べても有利です。何故なら実質的に無税で運用することができるからです。この点マイロン・ショールズ他の「タックス・アンド・ビジネス・ストラテジー」(邦題「MBA税務工学入門」中央経済社)は、次のように説明しています。

「年金基金に拠出された$1は、n年後には$(1+R)nとなるが、年金支払時に、この投資収益累計額の全額に対して税率tで課税されるとした場合、税引後の手取り額は$(1+R)n(1-t)となる。年金基金に対する当初の投資額は($1)は、税効果(税引)後で考えた場合、(拠出時に投資支出額が全額損金算入されているために)$(1-t)で済むことから、税引後投資支出額に対する税引後投資収益率は、次のように計算される。
{1/(1 -t )}(1 +R ) n (1 -t ) = (1 +R ) n
但し、R=税引前運用利回り
n =期間
t=通常税率  」

つまり$1の投資に対し、これが全額損金算入できれば$tだけ支払税額を節約できる、換言すれば$tだけ国家が補助していることにほかならないのです。これが確定拠出年金が投資対象として決定的に有利な理由です。ところが政府はこの点うまく企業や国民に説明できていません。ちゃんと理解してもらえれば一気に浸透していくと私は思うのです。

CFOとしてはあの忌まわしき退職給付会計から解放されるという副次的な効果も見逃せませんね。

【リンク】

MBA税務工学入門―タックス・アンド・ビジネス・ストラテジー
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