エディオンの日本版ESOP

エディオンは22日、信託の仕組みを使った従業員持株制度(日本版ESOP)で2回目の信託を設定すると発表した。昨年2月に設定した1回目が終了したため。エディオンは自己株式約104万株を1株747円で信託に割り当てる。
(日本経済新聞2011年2月23日15面)

【CFOならこう読む】

「信託期間は3月中旬から約1年間。信託はエディオンから取得した同社株を毎月従業員持株会に売却する。株価上昇で売却益が出れば、信託期間終了後に従業員に分配する仕組み」(前掲紙)

エディオンの日本版ESOPの概要は以下の通りです(プレスリリースから転載します)。

※クリックすると拡大表示します。

①当社は受益者要件を充足する従業員を受益者とするESOP信託を設定いたします。
②ESOP信託は銀行から当社株式の取得に必要な資金を借入れます。当該借入にあたっては、当社がESOP信託の借入について保証を行います。
③ESOP信託は上記②の借入金をもって、信託期間内に当社持株会が取得すると見込まれる数の当社株式を、当社から一括して取得いたします。
④ESOP信託は信託期間を通じ、毎月一定日までに当社持株会に拠出された金銭をもって譲渡可能な数の当社株式を、時価で当社持株会に譲渡いたします。
⑤ESOP信託は当社の株主として、分配された配当金を受領いたします。
⑥ESOP信託は当社持株会への当社株式の売却による売却代金及び保有株式に対する配当金を原資として、銀行からの借入金の元本・利息を返済いたします。
⑦信託期間を通じ、信託管理人が議決権行使等の株主としての権利の行使に対する指図を行い、ESOP信託はこれに従って株主としての権利を行使いたします。
⑧信託終了時に、株価の上昇により信託内に残余の当社株式がある場合には、換価処分の上、受益者に対し信託期間内の拠出割合に応じて信託収益が金銭により分配されます。
⑨信託終了時に、株価の下落により信託内に借入金が残る場合には、上記②の保証に基づき、当社が銀行に対して一括して弁済いたします。
(2011年2月22日「第2回「従業員持株ESOP信託」の導入に関するお知らせ」株式会社エディオン [PDF])

日本版ESOPの一般的な会計処理の考え方について、リソー教育の日本版ESOP(2011年1月25日エントリー「リソー教育の日本版ESOP」)をとりあげた時に次のように説明しました。

「いわゆる日本版ESOPの会計処理については、個別財務諸表上で信託で保有される導入企業の株式は「自己株式」とされるか(個別オン)、されないか(個別オフ)、ビークルである信託が、導入企業の子会社とされるか(連結オン)、されないか(連結オフ)の組み合わせにより、以下の4つが考えられます。

1.個別オフ 連結オフ
2.個別オン 連結オフ
3.個別オフ 連結オン
4.個別オン 連結オン

このうち1の方法では、自社の株式と債務保証を付した借入金を抱える信託が、連結財務諸表上取り込まれないため問題があります。

また3及び4の方法では、子会社の親会社株式取得が違法なものになると考えられます。したがって消極的な理由から2の方法が採用されるケースが実務上増えているようです。」

エディオンの2010年3月期の有価証券報告書を見ると、単体財務諸表に次のような注記が行われています。

「【追加情報】
(信託型従業員インセンティブ・プランにおける会計処理について)
当社は、従業員の労働意欲や経営参画意識の向上を促すとともに、株式価値の向上を目指した経営を一層推進することにより中長期的な企業価値を高めることを目的として、従業員インセンティブ・プラン「従業員持株ESOP信託」を導入しております。本プランでは、「エディオングループ社員持株会」(以下「持株会」といいます。)に加入する従業員のうち一定の要件を充足する者を受益者とする信託を設定し、当該信託は今後1年間にわたり持株会が取得すると見込まれる数の当社株式を一括して取得し、その後毎月一定日に持株会へ売却いたします。
当該株式の取得・処分については、当社が三菱UFJ信託銀行㈱(従業員持株ESOP信託口)(以下「信託口」といいます。)の債務を保証しており、経済的実態を重視した保守的な観点から、当社と信託口は一体であるとする会計処理を行っております。従って、信託口が所有する当社株式や信託口の資産及び負債並びに費用及び収益についても貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書に含めて計上しております。なお、当事業年度末に従業員持
株ESOP信託が所有する当該株式数は740,200株であります。」

したがって上述した2の方法により会計処理がなされているものと思われます。

【リンク】

2011年2月22日「第2回「従業員持株ESOP信託」の導入に関するお知らせ」株式会社エディオン [PDF]