FAS159

好転が伝えられる米大手銀行の1−3月期決算を巡り、特殊な会計処理の結果が生じる「負債評価益」という項目が、各社の利益水準を大幅にかさ上げしているとの指摘が金融専門家の間で出ている。シティグループなど大手3社が計上した同評価益は計53億ドル(約5200億円)と3社の純利益の67%に達する。合法だが本業の収益力を反映しないため「財務の実態が見えにくくなる」との批判がある。
(日本経済新聞2009年4月23日7面)

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負債評価益とは、社債など企業の負債の市場価値(時価)が下落した場合に、企業から債権者への支払い義務も同時に減少したとみなしてその分を利益に計上するもの。
米会計基準「FAS159」がこうした処理を認めているが、米銀がこれだけ多額の負債評価益を計上したのは今回の決算が初めてという。
(前掲紙)

一般論として言うなら、財政状態が悪化し信用リスクが低下している状況下で負債を時価評価し評価益を計上するのは、むしろ理論的であると言えます。企業会計は期間損益を株主資本として認識しますが、例えば債務超過の状態にある場合、繰越損失の一部は債権者に負担させる(負債を評価減する→利益を計上する)必要があるのです。

株主の有限責任を鑑みると、債務超過というような純資産がマイナスの状況はあり得ないということですが、記事にあるように、多くの人が”会社の財政状態悪化”→”利益計上”というベクトルに違和感を感じることから、負債の時価評価は制度化されていません。

しかし、FAS159 は、負債の時価評価を会社が選択することを認めたことから、シティグループ等の大手銀行が今回大きな評価益を計上することになったのです。

「FASB159”金融資産及び金融債務に関する公正価値オプション”は、2007年2月に発行されています。

FAS159は、企業が、選択した特定の日に、多くの金融資産及び金融債務(ならびに金融商品に似ている非金融商品)を公正価値で測定することを自発的に選択することを認めています(「公正価値オプション」)。この選択は各金融商品ごとに行われ、後で取消、変更することは認められません。この選択は各金融商品ごとに行われ、後で取消、変更することは認められません。

公正価値オプションが選択された場合、FAS159 はその金融商品に関する公正価値評価のその後の変更はすべて利益に計上しなければならないと記しています。」
http://www.shinnihon.or.jp/static/upload_file/knowledge/global/newsletter/jbsu_0702.pdf

一般論としてはこういうことなのですが、シティグループのように国がつぶさないと決めている会社において、一時的な自社の信用リスクの低下をPLに取り込むことには問題があると思います。

そこまでやるなら株主資本も時価評価しないと理論的に整合しないでしょう。

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