東証 上場制度整備懇談会提言発表

株式上場制度の見直しを検討していた東京証券取引所の「上場制度整備懇談会」(座長=神田秀樹東大教授)は23日、特定の第三者に新株を発行する「第三者割当増資」の規制を求める提言を発表した。東証は提言を踏まえ、今夏をめどに増資規制を導入する。
毎日jp 2009年4月24日

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提言の概要は以下の通りです。

1.第三者割当に関する提言
2.株式併合に関する提言
3.議決権行使を容易にするための環境整備に関する提言
4.議決権行使結果の開示に関する提言

最も重要な部分は第三者割当に関する提言です。その概要は次の通りです。

・発行済株式の3倍以上の新株を発行する企業について、株主の利益を侵害する恐れがあると東証が判断した場合、上場廃止とする。
・発行済株式の25%以上の新株を発行する場合(又は支配権の異動がある場合)は、経営陣から独立した者からの意見経営陣から独立した者からの意見聴取するか、株主総会決議などによる株主意思の確認を行う。

例えば、会社の説明の正当性を担保できる程度に経営陣から一定程度 独立した特別委員会や社外取締役等に第三者割当の必要性と相当性についての意見を求めるといった手続が考えられる。

但し、この上記手続きを実施することが困難なほど資金調達の緊急性が高いと東証が認める場合は、手続き不要・有利発行の該当性の判断をするに当たり、計算方法次第ではディスカウント率が10%超になる場合、開示資料に監査役からの適法性に関する意見を追加する。

また、新株予約権付社債及び新株予約権の第三者割当は、有利発行に該当するかどうかの判断が難しく、疑わしい事例が比較的多いように思われたことから、新株予約権付社債及び新株予約権の第三者割当については、全ての事案を対象として払込金額の算定根拠や適法性に関する開示を求める。

率直な感想としては、これでは実効性が期待できないと思います。
今後は単に形式的に25%を超えないよう第三者割当増資を行うようになるだけでしょう。

王子・北越のケースにおける北越の三菱商事の第三者割当増資は24%であったことを想起してみれば、この規制に実効性がないことがわかるはずです。

また、何故25%かについてもよくわかりません。現在でも議決権行使の関係から25%というのは一定の抑止力があるので、あえて25%で切る必要性はないように思います。ニューヨーク証券取引所と同じ20%で良いのではないでしょうか?

25%以上の新株発行の場合に、特別委員会か社外取締役の同意が必要であるという点についても、現状特別委員会も社外取締役も機能しているとは言い難い中、これらに過度な役割を負わせると、かえって形骸化してしまうことになる、と私は思います。

20090424

第三者割当に関する対応策 「安心して投資できる市場環境等の整備に向けて」東京証券取引所 上場制度整備懇談会より

【リンク】

2009年4月23日「安心して投資できる市場環境等の整備に向けて」東京証券取引所 上場制度整備懇談会