M&Aに財務アドバイザーはいらない?

日経ヴェリタスの大型インタビューシリーズの2回目は、信越化学工業の金川千尋会長。厳しい競争を勝ち抜く秘訣について「作ったものを100%売り切ればいい。努力です」と強調する。
(日経ヴェリタス2011年3月20日10面)

【CFOならこう読む】

−M&A(合併・買収)を活用し事業を拡大してきました。しかし、M&Aでは投資銀行などの財務アドバイザーを、あまり利用していません。なぜですか。

経営や事業のことは自分たちでやるべきだと思います。社内にも財務や経理の専門家もいるわけですしね。ただ、法律や会計の専門家は超一流の人にお願いしています。」(前掲紙)

M&Aの場面で、経営や事業を財務数値に落とし込んで、適正なバリューをはじき出すのが財務アドバイザーの仕事ですが、これが出来る人が社内にいれば財務アドバイザーは必要ないかも知れません。しかし、このような人材が社内にいる会社は少ないでしょう。

M&Aを頻繁に行う会社は、CFOとしてこのような人材を迎え入れることがあります。例えばスティーブン・ボーレンバックはM&Aのディールメイキングを得意としたCFOの一人です(2007年7月5日エントリー「米ブラックストーン、ヒルトンホテル買収へ・3兆1800億円」)。

「CFOがプロスポーツのスター並みの高給でスカウトされることも日常茶飯事になった。前出のボーレンバックは1995年にあのアイズナー率いるディズニーに引き抜かれたが、その時のボーナス・パッケージは2000万ドルに達したと推定されている。これはアメリカン・フットボールのダラス・カウボーイが、スタープレイヤーのディオン・サンダーズをスカウトする時に提示した移籍マネーを700万ドル上回るものだった。アイズナーからすれば、キャピタル・シティーズ/ABCのような巨大な買収案件をウォール街の一流投資銀行を雇わずにまとめることができれば、それだけでボーレンバックに2000万ドル払ってもおつりが来るというものである」
(井手正介著 CFO最強列伝 日経BP社)

そういう意味では、信越化学工業には金児昭さんという人がいたから財務アドバイザーは不要であったということでしょう。

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