原発ジプシー
「なぜちゃんと安全を確認しない」「『死にに行け』と言うのと同じだ」。作業員三人が被ばくした福島第一原発3号機の復旧工事。原発で働く下請け作業員からは東京電力のずさんな安全管理を批判する一方、「上から言われればやむを得ない」とあきらめる悲哀も口にした。
(東京新聞2011年3月26日)
【CFOならこう読む】
今日は土曜日だし、天気も良いので最近考えていることを少しだけ書きます。
それは福島原発の協力会社の作業員の方々のことです。
協力会社というのは、ビジネスの現場で一般的に使われている用語ではなく、何故こんな表現の仕方をするのだろうと思われる方も多いだろうと思います。私はそこに何らかの事実を隠蔽するような意図を感じます。
「被ばくした三人のうち、一人は作業を請け負った関電工の下請け社員。電力会社を頂点とする原発ピラミッドでは、さらに底辺にいる下請けが危険な仕事を任されるとの見方は根強い。彼らは「原発ジプシー」と呼ばれ、定期検査ごとに全国各地の原発を渡り歩く」(前掲紙)
私が「原発ジプシー」の存在を初めて知ったのは、森崎東さんという映画監督の「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」(1985年・ATG)によってです。
森崎東さんは、寅さんや釣りバカその他の喜劇を中心にてがけている映画監督ですが、社会的な弱者のバイタリティーが全ての映画の根底にあり、大好きな映画監督のひとりです。
そうそう夏目雅子の「時代屋の女房」の監督でもあります。
「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」も森崎東監督らしい傑作喜劇ですが、公開当時はなかなか配給が決まらず、いったいいつになったら見れるのだろうとヤキモキしたのを覚えています。
この映画は良質なエンターテインメントで、わかる人にだけわかるというようなマイナーな映画でもなければ、これ見よがしの社会派映画でもありません。
倍賞美津子、原田芳雄、平田満、泉谷しげる、梅宮辰夫、小林稔侍といったキャストの名前をあげるだけでもわかって頂けると思います(音楽は宇崎竜童です)。
しかし公開まで時間を要しただけでなく、上映した映画館の数もとても淋しいものでした。その理由は原発を取り扱っているからだとか、圧力があったからだとか色々に言われましたが、真実のほどはわかりません(どんなことを言われているかは、例えば「生きてるうちが花なのよ‾死んだらそれまでよ党宣言」のカスタマーレビューをご覧になってください)。
私が今ここで言いたいのは、圧力の有無であるとか、東京電力を頂点としたヒエラルキーの存在とかそんなことではありません。
「原発ジプシー」が存在するという事実です。
映画で描かれていた世界が全て真実であるとは思いませんが、今回事故に遭われた作業員と、原発で作業中に廃液漏れで被爆し、事故隠しの為にボート小屋に監禁された安次を演じる泉谷しげるが、私の中では重なって見えます。
この映画はDVDになっていません。
それが何故かはわかりませんが、ぜひDVD化されて欲しいと願います。
また、良識あるマスコミがこの問題を真摯にとりあげることを望みます。
今まで隠されてきた本当のことを知った上で原発の今後について議論すべきだと思います。
そして本当に言いたいこと。3月24日の日経新聞の米倉経団連会長へのインタビューの中での米倉氏の発言
「日本は原子力発電にしか頼れない」
に対し、
”ふざけるなこの野郎、お前が原発ジプシーをやってから言え”
なお、「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」のあらすじは、goo-映画「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」
をご覧下さい。
【リンク】
goo-映画「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」