経団連会長、法人税減税撤回を容認

日本経団連の米倉弘昌会長は28日の記者会見で、東日本大震災の復興資金の手当てに関して「(民主党が掲げる)高速道路無料化をやめ、子ども手当も休止すべきだ」と指摘した。昨年決まった法人税率の引き下げについても、個人的な見解だが、やめて頂いて結構だ」と語った。
(日本経済新聞2011年3月29日5面)

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法人税率引き下げについて野党が反対するのはわかります。しかし、経団連会長がこういうことを言うのは理解できません。

平成23年度税制改正大綱は、法人税率引き下げの理由を次のように説明しています。

「デフレから脱却し、日本経済を本格的な成長軌道に乗せていくため、国内企業の国際競争力強化と外資系企業の立地を促進し、雇用と国内投資を拡大 する必要があります。このため、新成長戦略の一環として、平成 23 年度税 制改正において、課税ベースの拡大等と併せて、法人実効税率を5%引き下 げます。中小法人に対する軽減税率についても3%引き下げます。デフレ脱却と雇用拡大を最優先して、「ペイアズユーゴー原則」1との関係では今回の 税制改正による財源の確保は十分でありませんが、思い切った引下げ措置を 講ずることにします」

法人税率引き下げは、企業を優遇しようという意図で行われるわけではありません。それが国富創造につながるから行われるのです。

経団連会長としては、今こそそこのところをきちんと主張すべきでしょう。雇用と国内投資の拡大のために法人税率引き下げが必要だということを、頭を下げて国民に理解してもらえるよう説明すべきです。

「やめて頂いて結構」とは何事でしょうか。

これでは法人税率引き下げは、私企業の利益・利権のために行われるもので、有事だから手放しても良いと言っているようです。今税制で検討すべきは、法人税法では寄附金の損金算入要件の緩和、所得税法では寄附金の税額控除の制限の緩和、でしょう。

「ニトリHDは、東日本大震災で被災した地域に、新たに約12億円の義援金を寄付する。このうち、5億円は創業者の似鳥昭雄社長個人からという。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が個人で10億円の寄付を発表するなど、経営者個人による巨額の義援金が相次いでいる。」
ニトリHD、被災地に義援金 日本経済新聞 2011/3/29 0:19

このような動きを税制側で援護することが必要だと思います。復興資金については、国民が広く皆で負担すべく消費税で賄うのが良いと思います。大前研一氏が言うような「期間限定・目的限定被災地救済消費税」の導入も検討に値すると思います。

「計画停電・復興資金~一工夫で無理なく解決。政府はリーダシップを発揮せよ」 大前研一「ニュースの視点」

【リンク】

2011/3/29 0:19「ニトリHD、被災地に義援金 日本経済新聞

「計画停電・復興資金~一工夫で無理なく解決。政府はリーダシップを発揮せよ」 大前研一「ニュースの視点」