監査・監督委員会

・取締役会は企業価値増大のために経営監視
・「監査・監督委員会」は法令順守偏重の検討
・国際標準導入せねば日本の資本市場は孤立

(日本経済新聞2011年4月1日27面 経済教室 田村達也全国社外取締役ネットワーク代表理事 )

【CFOならこう読む】

「内外の投資家から「社外取締役の義務化」の要望が強い中、現在、会社法制部会で検討され、有望視されているのが「監査・監督委員会」制度だ。これは監査役や指名・報酬委員会を置く代わりに、社外取締役をメンバーとする「監査・監査委員会」を設置する新しいガバナンス形態を法制化しようという考え方である」(前掲紙)

田村氏は、次の理由からこの制度はコーポレートガバナンスの向上にに寄与しないと主張しています。

1.監査・監督委員会は経営者の指名・報酬事案を審議しない
2.監査・監督委員会の審議事項は、現在の監査役会と実質的に同じで、現在すでにコンプライアンス問題に傾きがちな多くの企業の取締役会の役割を、一層その方向に定着させることになり得る
3.世界の潮流からはずれることにより、海外資本が積極的に参加しにくい環境となる、日本がグローバル経済の発展から取り残される

田村氏の言っていることは至極もっともだと思います。何故監査・監督委員会というような妥協の産物のような発想が出てくるのでしょう?
この点について、田村氏は次のように説明しており、これについても首肯できます。

「コーポレートガバナンスの改善という各ステークホルダー間の複雑な利害が絡む会社経営に関わる問題を、経済体制のあり方として各界を含めた幅広い検討の場で議論するのではなく、いきなり法制審で法律問題として審議していることにも原因があるのではなかろうか」(前掲紙)

例えば、税制に関しては学際領域にあるという共通理解のもと、法律学者が法律問題として議論すべき領域を踏み越えてはいけないという意識が、法律学者の側に強く働いているように思います。コーポレートガバナンスの問題も、税制と同様、法律学者が議論すべき領域とそうでない領域があり、会社法制部会の議論はその一線を越えているように感じます。

【リンク】

法務省 法制審議会 – 会社法制部会