カバードボンド、欧州で起債急増

金融機関が保有する住宅ローンや地方自治体向けなどの優良な融資債権を担保にした社債(カバードボンド)の起債が、欧州市場で急増している。1月の発行額は約510億ユーロと、単月で最高だった2006年1月(340億ユーロ)を上回った。バークレイズ・キャピタルでカバードボンドを担当するテッド・ロード・マネージングディレクターに同市場の現状と展望を聞いた。
(日経ヴェリタス2011年4月18日9面)

【CFOならこう読む】

-カバードボンドの発行が急増している理由は。
「投資家は安全な資産を好んでいる。先行き不透明感から発行に拍車がかかった。カバードボンドは債券の返済に充当できる別の資産が用意される(住宅ローン債権などを担保にした証券化商品とも異なり)返済の可能性が極めて高い。過去に国債の債務不履行はあるがカバードボンドのデフォルトはいまだに1件もなく、歴史的にみても安心できる金融商品だ」(前掲紙)

日本総研のレポートからカバードボンドの特徴を抜粋します。

◯今回の国際金融危機においては、CDO(collateralized debt obligation)やMBS(モーゲージ担保証券)といった、オフ・バランス型の市場型間接金融手法としての証券化商品の、次のような弱点が露呈。
①証券化して原融資債権のリスクを細分化し、移転する過程で、個々の融資債権のリスクを情報開示する仕組みや、質(信用力)の維持を図る仕組みが存在せず。
②証券化商品の発行金融機関は、当該証券化商品をいったんオフ・バランス化して発行してしまうと、その後の担保債権の信用力の維持に対し、責任をもつ仕組みとも、また、規制上の枠組みともなっておらず。
◯カバード・ボンドの制度設計
これに対して、カバード・ボンドは、オン・バランス型の市場型間接金融の手段(図表)。市場型間接金融は、制度設計を誤れば、上記①②のような問題を招来しかねない可能性を考慮し、200年余り昔から、極めてシンプルな発想で、以下のように制度設計。
①担保資産の高い質を、満期到来までの間、一貫して維持するため、
(イ)発行銀行に対し、担保資産の継続的な情報開示を義務付け。
(ロ)金融当局ないし第三者が担保資産を監視。
(ハ)必要な場合には、担保資産の入れ替えを随時行わせる。
②発行金融機関にとっては、担保資産が発行後も引き続き自行のバランス・シート上に残るため、カバード・ボンド発行後も、リスク管理を一貫して行うことが必要。
◯両者の信用力(金利)の比較
こうした制度設計上の相違を背景に、カバード・ボンドの方が、資産担保証券よりも信用力が高い、というのが市場の一般的な評価。
例えば、今回の危機到来前の「平時」における両者の金利水準を、同種のモーゲージ(不動産向け融資債権)担保のものについて比較すると、カバード・ボンドの金利は、資産担保証券よりも、おおむね15~20bp低く、民間銀行の調達金利の基準であるスワップ・レートをも下回るレベルで推移。

クリックすると拡大表示します。

【リンク】

2009年2月13日「カバー・ボンド グローバル金融市場における 金融仲介機能回復に向けて」株式会社 日本総合研究所 調査部ビジネス戦略研究センター [PDF]