ルネサス・NECエレクトロニクス統合の会計処理
半導体国内2位のルネサステクノロジと同3位のNECエレクトロニクスは27日、来年4月の経営統合で合意したと正式発表した。余剰生産ラインの削減などリストラを前倒しし、新会社は統合初年度の2010年度から黒字にする方針を明らかにした。公的資金の活用も視野に入れて財務体質を強化。世界的な再編が進む半導体業界で生き残りを目指す。
(NIKKEI NET 2009年4月28日)
【CFOならこう読む】
両社の統合に係る会計処理を考えてみたいと思います。
(NECエレは米国会計基準を適用していますが、説明の都合上日本基準を適用しているものとして行います)
両社の概要は次の通りです。
NECエレクトロニクス | ルネサステクノロジ | |
資本金 | 85,955百万円(平成21年3月末) | 77,000百万円(平成21年3月末) |
純資産 | 224,817百万円(連結、平成20年9月末) | 333,052百万円(連結、平成20年9月末) |
総資産 | 622,047百万円連結、平成20年9月末) | 840,343 百万円(連結、平成20年9月末 |
売上高 | 687,745 百万円(平成21年3月期) | 950,519百万円(平成21年3月期) |
当期純損益 | △15,995百万円(平成21年3月期) | 9,468百万円(平成21年3月期) |
大株主及び持株比率 | 日本電気株式会社 65.02% | 株式会社日立製作所 55% 三菱電機株式会社 45% |
NECエレはNECの連結子会社、一方ルネサスは日立及び三菱電機の持分法適用会社です。
「統合新会社は、東証一部上場のNECエレを存続会社として上場を維持する。合併を軸に、主要株主の出資比率をなどを詰めたうえで7月末までに統合契約を締結する。」
(前掲紙)
以下合併を前提にお話しします。NECエレとルネサスのどちらが取得企業となるかが問題となります。
原則的には株主価値が大きい方が取得会社となります。ルネサスは非上場会社なので、単純にどちらの時価総額が大きいかはわかりません。両社の概要を見る限り、売上、総資産、当期純損益のいずれにおいても勝るルネサスが取得企業となる可能性が高いと思います。
存続会社はNECエレ、取得企業はルネサスであるなら、この統合は逆取得となります。
この場合、
- NECエレの個別財務諸表上はルネサスの資産・負債を簿価で引き継ぎます。
- 連結財務諸表上は、NECエレを被取得企業としてパーチェス法を適用します。
主要株主の会計処理はどうなるでしょう?
NECの会計処理は次のようになります(適用指針10号275項参照)。
- 個別財務諸表上は、交換損益は認識せず、そのまま株式の簿価を引き継ぎます。
- 連結財務諸表上は、これまで連結していたNECエレの株式について持分法へ修正するとともに、以下の処理を行います。
(1) ルネサスに投資したとみなされる部分についてはのれんとして処理されます(但し持分法になるので独立表示されるわけではありません)
(2) NECエレに対して有していた持分のうち、ルネサスに対する持分と交換されたみなされる額(株主価値=時価)と従来のNECエレに係る持分の減少額(簿価)との差額は、持分変動差額として損益処理されます。
日立及び三菱電機の会計処理は次のようになります(適用指針10号289項参照)。
- 個別財務諸表上は何も処理されません。
- 連結財務諸表上はルネサスに対する持分の一部がNECの持分に振り替わることから生ずる差額は、持分変動差額として損益処理されます。
PBR1倍割れの状況下では、持分変動差額はマイナス(損失)になります。