ストックオプション「有償型」広がる

対価を払ってストックオプションを受け取る「有償型」の導入がベンチャー企業を中心に広がっている。16日までに37社と、1年前の20社からほぼ倍増した。主流の無償ストックオプションと異なり会計上の利益を押し下げずに済むうえ、利益額など経営目標を達成した場合にのみ行使できる、といった条件を盛り込めるのも特徴だ。
(日本経済新聞2011年6月17日15面)

【CFOならこう読む】

無償のストックオプションは、役務提供の対価として付与されるものなので、その公正価値を付与した企業のPL上費用しなければなりません。これが有償であるなら、新株予約権の発行となるので、PLにはヒットしません。

また、有償ストックオプションは、税制適格要件を満たさないオーナー経営者の税制上も有利になる場合があります。

税制適格とならない無償ストックオプションは、権利行使時点で、「権利行使時の株価-権利行使価額」に対して給与所得として課税がなされ、株式売却時に、「売却価額ー権利行使時の株価」についてキャピタルゲインとして課税されます。

権利行使時に、キャッシュインがないにも関わらず、多額の納税を余儀なくされる場合があるので、税制適格要件を満たさないようなストックオプションを付与することは好まれません。

これが有償であると、権利行使時の課税はなく、売却時にキャピタルゲイン課税(原則として譲渡所得の20%(所得税15%・住民税5%)の課税)があるだけなので、無償の場合と比べ大きな税務メリットが取れる場合が少なからずあります。

「有償オプションは業績や財務目標に応じて行使条件を設定できる。ソフトバンクの場合、フリーキャッシュフロー、純有利子負債、営業利益について、一定の条件をすべて満たして初めて権利行使できる仕組みだ」(前掲紙)

ソフトバンクの行使条件は次の通りです。

「ア 当社が金融商品取引法に基づき提出した有価証券報告書に記載された平成22年3月期及び平成23年3月期並びに平成24年3月期の連結キャッシュ・フロー計算書におけるフリー・キャッシュ・フローの合計額が、1兆円を超えること。なお、フリー・キャッシュ・フローは、次の算式により計算されるものとする。

フリー・キャッシュ・フロー = 営業活動によるキャッシュ・フロー + 投資活動によるキャッシュ・フロー

イ 当社が金融商品取引法に基づき提出した有価証券報告書に記載された平成24年3月期の連結貸借対照表における純有利子負債の金額が0.97兆円未満であること。なお、純有利子負債は、次の算式により計算されるものとする。

純有利子負債 = 有利子負債 - 手元流動性。

有利子負債 = 短期借入金 + コマーシャルペーパー + 1年内償還予定の社債 + 社債 + 長期借入金。

ただし、以下の(ア)及び(イ)は有利子負債に含まないものとする。

(ア)リース債務
(イ)ボーダフォン日本法人の買収に伴う事業証券化(Whole Business Securitization)スキームにおいて発行された社債(銘柄:WBS Class B2 Funding Notes、発行体:J-WBSファンディング(株))のうち、当社が平成22年3月期に取得した額面27,000百万円
手元流動性 = 現金及び預金 + 流動資産に含まれる有価証券。

ウ 当社が金融商品取引法に基づき提出した有価証券報告書に記載された平成23年3月期及び平成24年3月期の連結損益計算書における営業利益の合計額が、1.1兆円を超えること。」
2010年7月29日新株予約権(有償ストックオプション)の発行に関するお知らせ」ソフトバンク株式会社

今日のニュースは、ベンチャー企業と言っても上場企業を対象にしたお話しであることに留意が必要です。
未上場企業の場合、市場株価がないので、ストックオプションの公正価値の算定は困難でしょう。

【リンク】

2010年7月29日「新株予約権(有償ストックオプション)の発行に関するお知らせ」ソフトバンク株式会社