香港上場企業ー味千ラーメン

世界の有力企業が初めて株式を公開する場所として香港を選ぶまでになったのは、英語ですべてが完結する利便性に加え、世界の有力な機関投資家が香港に拠点を加え、世界の有力な機関投資家が香港に拠点を構え、企業価値を適切に評価する体制が整っているためと思われる。東京市場は17日も日経平均株価が下落し、第1部の株価純資産倍率(PBR)は1倍ちょうどまで下げたが、そこまで株式に対する信頼が薄い市場にあえて上場したいと考える外国企業はまずないだろう。
(日経ヴェリタス2011年6月19日65面)

【CFOならこう読む】

「ちなみに味千ラーメンを展開する重光産業(熊本市)は日本市場を素通りして、中国事業を統括する味千中国ホールディングスを2007年3月に香港取引所に上場した。17日現在の時価総額は1550億円、PERは33.5倍、PBRは5.4倍だ。東京に上場していたら、ここまでの評価は得られただろうか」
(前掲紙)

これだけ読むと、日本では無名の日本企業でも、香港で上場することで高い株価がつくという浮ついた話に聞こえますが、そうではありません。味千は中国にビジネスベースを持つ、中国最大のラーメンチェーンです。

「味千中国ホールディングス」の本社は香港ですが、実質的なチェーン本部の機能を上海に置く現地企業です。同社は重光産業とフランチャイズ契約を結び、中国大陸で味千ラーメンを独占的に出店する権利を与えられている、れっきとした中国企業です。

味千中国の株式の51%は、会長兼CEO(経営最高責任者)の潘慰(デーシー・プーン)氏が持つ。重光産業も株主だが、出資比率は会社名義と重光社長の個人名義の合計で5%に満たない。

重光産業は、フランチャイズ契約に基づいてライセンス料、技術指導料などを受け取っている。その総額は約3億円。味千中国の収益力を考えれば、過小とさえ思える金額だ。このため、一部には「重光産業は商売が下手」「中国での成功は他力本願」などと揶揄する声もある。

しかし、重光社長はこうきっぱりと反論する。

「現地の事情を知らない日本人があれこれ口を出し、利益を吸い上げれば、パートナーにやる気が出るはずがない。反対に、自分よりパートナーの利益を優先して考え、惜しまずにサポートすれば、彼らは必死になって頑張る。努力すればするほどパートナーの手元に利益が残る仕組みにしたからこそ、今日の味千中国があるんです」
日経ビジネスオンライン2009年1月27日中国に324軒、吉野家よりメジャーな「熊本ラーメン」 重光産業(熊本県熊本市)【前編】

つまり、中国で成功し大きな成長期待のある中国企業が、香港で上場して高い評価を得ている、ということです。日本で上場できない会社でも香港では簡単に上場できて、しかも高い株価がつく、というようなお話しでは全くありません。

日経ビジネスオンライン2009年1月28日号「中国でのラーメン成功で、日本が再活性化 重光産業(熊本県熊本市)【後編】」では、ラーメン経験どころか飲食店経験もない香港人のパートナーといかに結束を強めていったかが紹介されています。

重光産業が積極的に中国展開を行うことを志向していたわけではなく、味千ラーメンの味に惚れた若い香港企業家の熱意にほだされ、香港進出を許可したのが、味千中国ホールディングスの始まりだったことが書かれています。

日々の仕事を真面目に地道にこなしていくことが、世界進出にまでつながるのですね。現在海外店舗は603店だそうです(味千拉麺)。

そういえばこの会社、「桂花」ラーメンが昨年民事再生法の適用を申請した際、スポンサーとして支援を名乗り出たことを今思い出しました。

【リンク】

日経ビジネスオンライン2009年1月27日中国に324軒、吉野家よりメジャーな「熊本ラーメン」 重光産業(熊本県熊本市)【前編】

日経ビジネスオンライン2009年1月28日号「中国でのラーメン成功で、日本が再活性化 重光産業(熊本県熊本市)【後編】」

味千拉麺